2.質問に答えちゃうよ?

 SE:オルゴール調の学校のチャイム

 SE:落ち着いたBGM(薄っすらと流れている)


「こんばんは~。“かすユウの丑三つ教室”へようこそ〜」


 SE:風鈴の音

 SE:フリック音


「ふふっ……びっくりした? わたしに逢いたいって想ったら、ホントにこのチャンネルを見つけられたでしょ?」


 SE:フリック音


「ふふっ……がまた来てくれて、わたしもうれしい。今日もよければゆっくりしていってね」


 SE:フリック音


「今日はね~、ともっと仲良くなりたいから、ゆっくりお話ししたいな。答えられる範囲でだけど、の質問にも答えちゃうよ? 早速だけど、何か聞きたいコトとかないかな?」


 SE:フリック音


「質問ありがと~。好きな食べ物はね~和菓子だよ~。特にきんつばが好き」


「他に聞きたいコトがあったら、遠慮なくどんどん質問してね?」


 SE:フリック音


「うん。ゴンザブロウがすっごく可愛いから特に犬が好きかな。他の動物も皆、可愛くて好きだけどね」


 SE:フリック音


「他に好きなものか~……あ、自然の中とか好きだよ。川のせせらぎ、鳥のさえずり、鈴虫の鳴き声も好き。綺麗な川と目に優しい緑もいいよねぇ……」


 (何か思いついたように)

「そうだ~。今度、自然の中で配信しちゃおうかな。いろいろ準備しておくから楽しみにしててね?」


「好きなもの以外に、何か質問はある?」


 SE:フリック音


「特技か~実はこー見えて、運動と演技が得意だよ~。演技は自然と身に着いた感じかな。よぉし、これも今度、披露しちゃうよ~」


 SE:フリック音


「ふふっ……『楽しみなコトが増えた』って言ってもらえてうれしいな」


 SE:フリック音


「へ? 配信を始めたきっかけ?」


 (不安そうに)

「うーんと……少し重い話になっちゃうかもだけど……それでもいい?」


 SE:風鈴の音

 SE:フリック音


 (最初はいつもの感じだが、徐々に声音が沈んでいく)

「じゃあ、話すね。えっと……わたしはね、誰かを元気にしたくて、配信を始めたの。わたしが絶望の淵に立ってた時に、わたしの手を引いて、誰も追いつけない場所まで一緒に逃げてくれた子みたいに……少しでも誰かを元気づけたくて」


 SE:風鈴の音

 SE:フリック音


「ううん。全然すごくないよ」


 (少し悲しげに)

「だってこれは……わたしの手を引いてくれた子に対する、罪滅ぼしも含まれてて……正直、自分のためでもあるからね……。結局、わたしは自分のコトしか……」


 SE:風鈴の音

 SE:フリック音


 (少し元気を取り戻して)

「ふふっ……『そんなコトない』って、言ってくれてありがと」


 (ふわりと微笑む感じで)

は優しいね」


 SE:フリック音


 (いつもの、ふわふわおっとりな話し方に戻って)

「ふふっ……うん。わたしの手を引いてくれた子は前回、話したゼロちゃんのコトで合ってるよ。ゼロちゃんはね、幼なじみでもあるんだ~」


 SE:フリック音


「うん。すっごく仲良し」


 (どこか愛おしそうに)

「今でも大好きだし、ここ数年はずっとずっと一緒にいるよ」


 (嬉しそうに)

「ふふっ……実はね、今も一緒にいるの。わたしが配信しているところを、傍で見守ってくれているんだぁ」


 SE:フリック音

 SE:風鈴の音


ゼロちゃんは……」


 (少し困ったように)

「恥ずかしがり屋さんだからね。お話しはできないの。ごめんね?」


 SE:フリック音

 SE:風鈴の音


「ふふっ……ありがと。ちなみに、他に質問はあるかな?」


 SE:フリック音


「えっと、配信を始めて今年で……」


 (指を折りながら)

「一、二、三、四、五年目かな」


 SE:フリック音


 (少し胸を張って、どこか誇らしく)

「うん。結構、長いでしょ?」


 SE:フリック音


 (あっけらかんと)

「年齢も全然、答えちゃうよ~。十五歳の時に配信を始めたから~今年で二十歳だね」


 SE:フリック音


「もっと若く見える? ふふっ……ありがと。お世辞でもうれしいなぁ」


 SE:フリック音


 (照れながら少し強引に)

「えへへ~……も~恥ずかしいから次の質問いっちゃおう?」


 SE:フリック音


「うん。この白色のワンピースは配信用の衣装だよ~。ホントは他のお洋服も着たいんだけど、これで固定されちゃってるんだよねぇ」


 SE:風鈴の音


「あ……固定されちゃってる、じゃなくて、固定してるだね。また言い間違えちゃった」


 SE:フリック音


「あらら~……わたし的には全然、不思議ちゃんキャラでやってるつもりはないんだけどなぁ」


 SE:フリック音

 SE:風鈴の音


「えっと……時々、聞こえる風鈴の音はねぇ……」


 SE:風鈴の音


 (少し苦し紛れに)

「わたしの趣味、かな?」


 SE:風鈴の音が二回


 (誰かの言葉を借りるように)

「風鈴の音ってすごくキレイで癒されるでしょ? だから時々、鳴るようにに吊り下げてるんだぁ」


 SE:フリック音


「うんうん。いいよね? 風鈴の音。にも気に入ってもらえてよかった」


 SE:風鈴の音

 SE:フリック音


「ふふっ……そろそろ眠くなってきた?」


 SE:フリック音


 (前のめり気味に)

「え? なになに? 遠慮しないで聞いてくれていいんだよ? 最初に、『答えられる範囲で』とは言ったけど、質問を聞かない限りは答えられるかどうかも分からないし。とりあえず、質問するだけしてみて?」


 SE:フリック音


 (相槌)

「うん。うん……」


「あ~昨日、話した『一度だけ守れなった約束』のコトかぁ……。あんな意味深な感じで言われたら、確かに気になっちゃうよね~」


 SE:風鈴の音

 SE:フリック音


 (あっけらかんと)

「ダメって言うより、どう説明すべきか悩むんだよねぇ。……これは、わたしの手を引いてくれた、ゼロちゃんの話にも繋がるんだけどね?」


 SE:風鈴の音


 (ほんの少し声のトーンを落として)

「『わたしユウがもし、どこか遠くへ旅立ちたくなったら、あたしも一緒に連れて行って』って……ゼロちゃんに言われてね? わたしはそれに『分かった』って返事して、『絶対だよ』って約束したのに……やっぱりゼロちゃんを巻き込みたくなくて、一人で旅立とうとしちゃったの」


 SE:風鈴の音


 (どこか切なく、だけど愛おしそうにも)

「だけどね、そんなわたしをゼロちゃんは探して、見つけてくれて……。それからさっきの話に繋がるの。わたしの手を引いて、誰も追いつけない場所まで一緒に逃げてくれた。……一緒に旅立ってくれたって話にね」


 SE:風鈴の音

 SE:フリック音


 (とても愛おしそうに)

「ふふっ……うん。ゼロちゃんのコト、大好きだよ」


 SE:風鈴の音


「なんだか少し、湿っぽくなっちゃったね?」


 SE:フリック音


「ふふっ……ありがと」


「それにしても今日は、にわたしの話をたくさん聞いてもらうばかりで、あんまり癒しをお届けできなかったなぁ……」


 SE:フリック音


「ふふっ……やっぱりは優しいね。そんなに、次回こそは癒しをたくさんお届けするから、楽しみにしててね?」


 SE:フリック音


「そろそろ眠たくなってきた?」


 SE:フリック音


「うん、もちろん。今日もが眠りにつくまで、子守歌を唄うね」


 SE:フリック音


 (とぼけるように)

「え? 昨日、パソコンが勝手にシャットダウンしてたの? お家の人が消してくれたとかじゃなくて?」


 SE:フリック音


「そうじゃなかったの? 不思議なコトもあるもんだね?」


 SE:風鈴の音

 SE:フリック音


「ふふっ……気にしないコトにしたんだ。うんうん。気にしても仕方ないコトの、一つや二つくらいあるもんね」


 SE:フリック音


「今日はスマホで配信見てくれてたんだ? その方が枕元に置きやすいもんね」


 SE:フリック音


「ふふっ……それじゃあ、コメントはもう打たないで? イヤホンから聞こえる、わたしの声だけに集中してね?」


 (少しの間)


 (囁き声)

「もう横になったかな? 何も考えないでゆっくり目を閉じて……深呼吸して……」


 (囁き声)

が良い夢を見られるように、今日も心を込めて歌うね?」


 しばらくの間、優しく穏やかな子守唄(鼻歌)が聞こえる。


 (囁き声)

「ふふっ……おやすみなさい。の明日が、良いものであるコトを願ってるね」


 SE:風鈴の音

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る