第二回 今世での縁
夏、同好会で開催したカップルデートがあまりにも楽しくて、観光地で遊びまくったらあっという間に終わっちまった。
俺のばぁちゃん家に行ったらばぁちゃんが聖に会うのも初めてなのに、うちのバカ孫のことをどうかこの先も、末永くよろしくお願いしますねって言ってくれた事もあった。
父ちゃん母ちゃんから、二人はもう付き合ってるもんだと思って結婚費用として、内緒でお金を貯めといてくれてた話を聞かされた時は驚いたな。
女性オンリーのクラブのイベントに行ってみたら最高だったという話もある。ノンアルコールのカクテルが充実していたし、バーテンのお姉さんには良くしてもらったんだ。
ナイトプールで隠れてベロチューした話もある。
イルカショーで同好会メンバー全員びしょ濡れ事件も外せない。
ラブホ女子会の話はまた今度な。
秋には日光東照宮に行った。
「まさかみんなで来られるなんて思わなかったね、類」
「そうだなぁ、部長と副部長も張り切ってたな」
修学旅行のように一つの大部屋がある宿に泊まったのもあり、楽しくて浮き足立っていたのを覚えている。夕食は部屋での懐石料理だった。
会長と副会長は成人を迎えていたのでお酒を楽しんでいた。副会長は酔うとキス魔になるが、会長にしかしないのを見て、愛だな、と思った。
電気を消すが、もちろんこれから第二部が始まる。
「これって⋯⋯みんな寝たっすよね⋯⋯」
「あっ⋯⋯ちょっと、どこ触ってるの樹ぃ⋯⋯」
「いいじゃん、未唯ちゃんこういうの好きっしょ?」
「うん⋯⋯いいよ⋯⋯」
隣の何かの音を聞いていたら朝になっていた。
名前、樹とちゃんと未唯さんっていうんだな⋯⋯
冬、噂のラブホ女子会をした。
恋バナをしている隣で、ゲームをして遊んでいた。
「聞いてくださいよ〜〜〜未唯ちゃん、とっても可愛いとこがあってぇ⋯⋯」
「ふん、沙里奈だって可愛いぞ。構ってあげないと拗ねるんだ」
惚気エピソードを暴露されている側は、顔を真っ赤にして悶えている。
「ということは、本当にあった話ということだな。だろう副会ちょ⋯⋯いや、紗織」
「ちょっ⋯⋯真紘ちゃん!分かってても答えは言っちゃだめなの!」
惚気大連鎖。
素晴らしいことが起きた。
「じゃあ再生するよ」
次はみんなで部屋を暗くして、ホラー映画を見ることになった。みんなでギャーギャー騒ぎながら、あそこに幽霊が見えたとか、ジャンプスケアのシーンで紗織副会長がびっくりしすぎてベットから落ちたとか、トピックには事欠かなかった。
寝る部屋は二人で一部屋だったので、カップル同士で別れた。
次の日の朝、何故か全員が少し疲れた状態でのスタートで、察した数名が、ありえないほどに顔を赤くして悶えていたのを覚えている。
もっと緊張感を持てと言われるかもしれないが、この何のこともない等身大の日常が、俺と聖にとってどれほど有難かったか。
答えは確かに見つかっていない。
それでも、この思い出作りは、意味のあることだったと思った。
「来年もそのまた来年も、その先もずっと、一緒に最高の人生にしようね!」
「あぁ、ずっと一緒だ⋯⋯!」
日々が続く限り、彼女の笑顔を、この先もずっと忘れずにいようと誓った。
──────
どーも、もしもし俺だ。この電話を二人で聞いてるなら、思い出しただろ。俺達は何者で、すべき事は何か。結局あの情報たちはどうしたって?
あぁ、それはこの「本」にまとめてある。そんな経年劣化するようなアナログなもんを使うなだって?おいおい、ロマンのないこと言うんじゃねぇよ。
分かってるって、柵は講じてあるから安心しろ。俺を信用しろよ。必要になったら時間と空間の狭間から目の前に現れる。あと、俺らの記憶だがな。
お前らとこの先の連中、まぁ俺なんだが。とにかく先に繋ぐために、ある時期になったら確実に全て思い出せるようにしておいた。
手首に変な痕があるだろ、体に直接刻印しておいてやった。
いつ思い出せるか?
そうだな⋯⋯分かりやすく言えば物心ついた時ってやつだ。ははは、変な痕つけんなってか。それだけ本気なんだよ。
俺はこんなふざけた運命なんぞにしたがってやる気はない。
運命とは、自分の手で切り開いていくものだ。最初から決まっているんじゃねぇ、絶対に変えられるんだよ。絶対にな。人間は可能性の獣だ。
空を飛びたいと太陽を目指したイカロスも、もちろんライト兄弟も、七つの海を駆け回っていた勇猛果敢な船乗りも、新世界を夢見て大陸を渡った連中も、月を目指して命懸けの挑戦を繰り返した探求者達も、決して諦めなかった。
諦めない限り可能性の灯火は消えない。
争い続けろ。
膝を折るな、立ち上がれ。
必ず成し遂げてくれ。
「私たち」の未来の為に。
────あいつらには教えなかったが、結論から言えば、ループを続けたその先で、この悲しい輪廻から抜け出し、見事にハッピーエンドを迎えた。
だが、詳しく言及するのはやめておこう。再び、運命が廻らないとも限らない。
というわけで、短い間だったが、付き合ってくれてありがとう。
急で申し訳ないが、この回線を使うのは今回で最後になる。安心しろ、未来はバラ色だ。聖なら隣で寝てるし、他の世界線の「私達」も無事だ。
それじゃ、聖が相手して欲しいみたいだから切るぜ。じゃあな。
通信終了。
通信終了。
通信終了。
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