旋風一閃、一騎当千
第一節 天狗と花嫁
大天狗というものは、太古の日本では身近な存在だった。だが今の日本にはそんな伝説上の生き物のことなど忘れてしまっている。それも仕方ない。
俺たち天狗は自らが住んでいた山を離れ、多くの人間たちの住む都会に出て「暮らす」ようになったからだ。拠点は低めの山にはあるが、人の里に降りたときに深夜ばいとなるものをやり、金を稼いでは人々の中に入って、現代の人らの営みを見ていた。
大天狗を必要とすることは殆どない複雑な世界に変わっていたのは、少し寂しくはあったが、それならと、定住せず金を稼いでは遊び歩いた。
きゃばくらで呑みすぎて二日酔いの頭に声がした。
救済を願う、悲痛な思いも感じた。
声をかけてきたおなごは言うには、別の場で私のような「神格」を呼び出している民族がいるらしいと聞かされた。そこには女しかいならしい。良いねぇ。
「貴女の助けを求める者達がいます。間界の婚姻と呼ばれる儀式で、あちらの何方かと婚姻を結んでいただきます。宜しいですね?」
────じゃあ早速、俺様の嫁さんに、会いに行こうか
「1番から21番、魔術回路への電力供給完了」
「召喚術式の検証できてます」
「術式空間内の時空位相をニホンにチューニング!」
「よし!見つけましたッ⋯⋯!」
これより「間界の婚姻」による神格実体の降臨を、開始します。
「⋯⋯理不尽です、こんなもの」
婚姻の花嫁に選ばれしは「烈風」の、いや、今は「無風のシムーン」と呼ばれる彼女は、美しいウエディングドレスを着せられ、出血する程の力で唇を噛み締めていた。
鳥人族である「戦士」の彼女らはハルピュイアである。
魔法工学を用いて傭兵業を生業として空に暮らしている種族であり、移動式航空要塞「ヘクス・ガルーダ」で各国を飛び回っていた流浪の民である。
彼女らは魔法工学を軍事利用し、彼女らの屈強な肉体と、技術を集めたボディーアーマーである「バトルフェザーアーマー」通称「Bfアーマー」を装着し組み合わせた無類の強さを誇っていた。
それも今は昔のことである。
「ニンゲン」と呼ばれる存在の登場により対局は変化し、他の民に協力する形で前線を支え崩壊を食い止めることで精一杯で常にギリギリの戦いを強いられていた。
シムーンが「疾風」を失ったのは、ハルピュイアに甚大な被害をもたらしたという、前回の大規模戦闘「血の災厄」が起きたときである。
彼女は小さな頃から飛び抜けて優秀な戦士であったが、腕を過信し人間の機械化部隊「撃滅部隊」隊長、通称「J」に正面から戦いを挑むも圧倒され敗北した。
無惨にも撃ち落とされ鳩のように群がってきた彼女らに身体中を食いちぎられ、脚を無くし、二度と戦うことも出来なくなった。
「良い銃撃センス、三次元の情報処理能力、負けん気は見事だった。貴様には私を倒す資格がある。この場で殺すのは惜しい。もう一度戦いたくば、強くなるがいい」
Jはそう言い残すと、飛行に適した形態に変形すると飛び去っていった。
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