第三頁 編集後記
「今日はここまででいいかい」
困惑といった表情だ。無理もない。
「えっ……」
美彩はこう見えて情熱的なのである。
「急にすまないね。美彩がこれ以上待てないようなんだ」
美彩の目が訴えてくる。焦らさないでと、私を早く愛してと。我が妻にこんな顔をさせるほど我慢を強いてしまうとは、自分もまだまだ未熟だな。
「ワタシも初夜を思い出して昂ってしまったよ」
フューラも、何かを察して熱っぽい表情をしていた。
「そう、ですね。お話もあらかたお聞きしたので、今回はこれで⋯⋯他に何かありましたら、後日文面で仰ってください。貴重なお話有難うございました」
「あの、フューラさん、我儘を言ってしまってごめんなさい⋯⋯」
「謝らないで下さい。美彩様は、何と言いましょうか、苦労された分、アルフリーダ様に甘やかされていてほしいというか、とにかく愛されていていただきたいと応援する気持ちが湧いてくるのです。不思議ですね、感情というものは」
「本日は有難うございました。失礼致します」
ドアが閉まり、小さい体に熱を持ったまま帰路につく。私達ホムンクルスも、透明化魔術が使われており、魔女の素質を持っている者にしか見ることができない。
それでも外を出歩くのは緊張してしまう。しかしこの広い世界では多くの人々がそれぞれに生きていることを知った今は、好奇心に従ってどんな事でもしてみようと思える。
私にとって今回のインタビューは有意義な物になった。
家に戻って、報告しなければ。急ぐ気持ちを抑えて家路についた。
閉まった扉のその内側では、婦妻の営みが行われるだろう。最愛の誰かと人生を歩むということが、いかに幸福なのかという一端を、私は知ることができた。
白の契りで、魔力から強く結ばれたアルフリーダ様と美彩様は、魔術総合商社「マギ・フューチャーテック」を一部上場を果たすような規模へと成長させた。
この先のビジョンは、企業としてさらに多くの分野で魔力を利用し、魔女のイメージである悪の部分は創作であり作られたものであると伝えていきたいと仰っていた。
眠る前に、日課である日々の出来事を日記に記録する作業に入る。
私は今日、初めてのインタビューに従事した。人の愛の結びつきは、どんな宝石より輝いている物なのだと言うことを知ることができたと思っている。インタビューをしたアルフリーダ婦妻はこれからも魔女と人間界の住人との共生を目指し進んでいくことだろう。
これからやってくる魔女の世紀を思うと心が躍る。このときめいた気持ちを持って、これからも多くの魔女の方々の聞き取りを続けていきたい。
私も、いつか、白の契りを結びたいと思えるような女性と出会ってみたい、という目標ができた。これもアーレア様とフェーリ様に報告しようと思った。
「ふう、こんなところでしょうか……」
日記を閉じると姉妹のうち三人の声がする。自分が聞いたことをアーレア様とフェーリ様に報告しているんだろうな。この内に込み上げてくる暖かさが「愛」なのだと思う。
自分も報告に行ったら、母様お二人大号泣。
「母様って呼んでくれたわ、娘の成長が嬉しい……」
誰かを思って涙を流せるお二人に生み出してもらって良かったと、心の底から思った。
集まったインタビューは一冊の本となり、ベストセラーになっていき人間界でも発刊されることとなった。魔女たちは、魔法界を行き来して暮らしを続けている。
後に誰も知らぬ場所で、白の契りが世界を救い、魔女たちは今日も愛を育んでいるという。
fin
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