第2-3話
そんな二人の冒険者を追うように、二つの小さな影がこっそりと遠くから忍び寄る。
魔女アリッサ、そして従者の人形リリーであった。
彼女らは集落跡で危機に追い込まれたように見えたものの、アリッサの発想と機転で難を逃れた。
それは捕らえた鼠を全て解放して囮にする事。
そして、土属性
アリッサの狙いでは当初、それだけで彼らが去ってくれれば良かったのだが、意外にも彼らがしつこく、立ち去ってくれそうにもなかったので次の手を講じた。
それはリリーを囮に使う事である。
リリーは
その能力は自身が収納できる魂の器があれば、無機物だろうが死体だろうが憑り移る事ができるというものだ。
更にポルターガイストという幽霊独自の力を用いて、軽いものなら宙に浮かすという芸当も朝飯前である。
基本的に人形に憑依しているリリーは、この力で移動しているのであった。
このリリーならでは囮というのが、鼠への憑依
クレイズが再度、
しかし、実際は鼠の反応ではなく、勿論、アリッサやリリーでもなく、正解はアリッサの
深黒の魔素で出来た塊を床に置いておくだけで、簡単に
アリッサの長年の経験で得た生き延びる術だ。
今回もその力を如何なく発揮し、クレイトンらが部屋に突入してきた際に囮を解除。
予め、同じ位置で待ち伏せていた鼠の死骸に憑依していたリリーに彼らを襲わせ、鼠が魔物だと誤認識させたのである。
「…にしても、ご主人様。先程の作戦はうまくいきましたね」
「ええ。貴女が尊い犠牲となってくれたお陰で、あの子達に見つからなくて済んだわ」
アリッサとリリーは世間話でもしているかの気軽さで、先程の戦果について語り合う。
遠目に見える女冒険者が使う探索魔術だけが少し脅威に感じるが、冒険者達も魔素の消費を抑える為、中距離以内での発動に控えているらしい。アリッサは付かず離れずの距離を、影に紛れながら移動した。
「ご主人様の為を思えば、この一度死んだ身。再び鼠の身体で両断される事も厭いません」
「ふふ。貴女、本当は少し恨んでいるのかしら?」
アリッサはリリーの畏まった物言いに可笑しくなり、つい笑みが零れてしまう。
「いえ、全く。シールドバッシュを受けた時には、私は既に気を失っていたものでしたので…」
「あれは痛そうだったわね。鈍い音がしたわ」
アリッサは当時を思い出し、つい顔をゆがめる。音の質から察するに、間違いなく骨は折れていると分かったからだ。
「いえ、私がもっと早くに鼠の身体から離脱すれば良かったのですが、攻撃を受けてから脱したもので。不甲斐ないです」
「いや。咄嗟の状況で貴女は最良の結果を齎してくれたわ。ありがとう」
リリーは主人にとんでもございませんと礼をする。そして顔を上げると、ふとある事に気が付いた。
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