第2-2話

 しばらく歩くのち、クレイズは今回の依頼の反省をしていたのか、ポツリと心境をこぼした。


「うーん、今更考えるとこの依頼は失敗にならないと思うけど、満額で報酬貰えるか微妙だなぁ…」


 ん?とクレイトンが半身を振り返りながら、クレイズに注意を向ける。


「んー、だって探査魔術サーチで魔物とかがいないか調べてみたけど、家一軒一軒入って念入りに調べたわけではないしさ」


「いや、大丈夫じゃないか?姉ちゃんの気にしすぎだよ」


「あの時は早く帰らなきゃって急いでて忘れてたけど、誰かいた痕跡があったんだよね?たまたま留守にしてたけど、もしかしたらまだ誰か…。いや、あの区域に住んでたのかも…」


「まさかぁ。魔物の死体まであったぜ?鼠までうじゃうじゃいて、誰があんなとこ住むかよ」


「そんなのわかんないじゃん」


 楽観的な相棒を見て、クレイズははぁと一つ大きな溜息を吐く。

 クレイトンは戦闘面では頼りになる相棒だが、それ以外では些か信頼感に欠く弟であった。


 というのも今まで姉のクレイズが雑事を一手に受けていたばかりに、クレイトンはつい無意識に姉に甘えてしまう。

 そして、クレイズもそんなクレイトンを見て自分がやらなくちゃと張り切ってしまう始末である。



 クレイズは以前から考えていた私案を吐露する。


「…やっぱりパーティーメンバーを増やすべきかなぁ。前までの簡単な依頼だったら二人だけでも難なくこなせてたけど、そろそろ厳しくなってきたし…」


「え!?俺と姉ちゃんだけでもいけるって!」


 まさに寝耳に水だというように反射的に答えるクレイトン。そんな弟を見て、更に溜息が出そうになりながらもなんとか堪える。


「ちょっとは真面目に考えてよ。クレイトンは斥候スカウト上がりの軽戦士フェンサー。私は土属性しか使えない魔導士メイジ。もう一人前衛職、特に耐久力が高い人がいれば安定感が増すと思うし、それ以外の職業でも戦略に幅が広がるじゃん」


「ぐぬ、ぅん…」


 クレイトンはクレイズの言葉に、まさにぐうの音が出ないといった様子で押し黙った。



「それに一回にかかる討伐時間が減れば、それだけ探索時間が増えるし、帰りの時間にも余裕が」


「わ、わかったって!けど、メンバーを選ぶ時は俺も一緒に考えさせてくれよ!?」


「当たり前じゃん」


 観念したと言わんばかりに両手を上げて降参の姿勢を取るクレイトン。

 彼のその最後の抵抗とも言える台詞も、クレイズのキョトンとした表情で何を今更と言わんばかりに言い放たれた言葉に打ち消された。



「あ、ちょっと待って。一回、探査魔術サーチ入れるね」


「お、おう」


 結局のところ、パーティーリーダーでもある姉、クレイズには頭が上がらない、クレイトンなのであった。

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