第1-4
突如、アリッサの魔術的な感覚器に警鐘が鳴る。
これはアリッサが外部から何らかの魔術を受けた時に発揮する身体の神経全体に備わっている感覚器なのだが、これは受けた方向、属性、質、量を瞬時に判別する所謂、魔女特有の
今回は家の外から地面を伝って、振動のようにアリッサへと魔法が走った。その特性からして地属性だろう。
地面から家の床を介しているからなのかやや微弱に感じられる。
攻撃や害意の意思はこの微力な魔法では感じられなかったものの、念の為、リリーに報告しようとすると。
「ご主人様。冒険者がこちらに向かってきております」
アリッサの報告よりも早くリリーからの報告があがる。
「どういう状況?」
「二人の冒険者が武器を構えて、慎重にこちらに向かってきております。一人が戦士。もう一人が魔法使いのようです」
「そう。ではリリー、覚悟を決めなさい」
アリッサは意を決したようにリリーに言う。
「殺すので?」
「いや。面倒な事になると言ったでしょう」
「左様で」
「安心しなさい、私に考えがあるわ」
◆◆
バン!と玄関の扉が勢い良く開かれて、そこから素早く片刃の片手剣を構えた革鎧を着た若い男が飛び出してくる。
彼は予め決められた一点に向かうように、一直線に、そして攻撃的に散在としているリビングを器用に駆け抜ける。
その一点とはまさしく先程までアリッサやリリーがいた陽光が当たる窓際であったが、今は彼女らの姿はなかった。
「いないな。…ってうわ!なんだこれ!」
彼は目標を見失うと周囲を警戒し、驚愕する。
それもその筈だ。家具や小物、食器等が散乱としている室内を走る無数の影。
人の掌サイズはあろうという大きさの鼠が走り回っているのだ。
想定しない状況につい片足を上げて、出来るだけ鼠に触れまいとしていると彼が蹴破ってきた扉から新たな人物が現れる。
「もう早いよ〜…。怪我してない〜?うわ!」
現れたのは木製の太い杖を持つ茶色の髪をした女の冒険者だった。
髪の長さこそ違えど、男冒険者と顔が瓜二つの為、彼らは親族の類なのかもしれない。
彼女も走り回る鼠に驚き、慌てて家を出る。それに続いて男冒険者も屋外へ退避した。
「びっくりしたー…。まさかあんなに鼠がうじゃうじゃいるとはなー」
「窓まで行くのに気が付かなかったの?」
「そこに誰か見えたからさ。やられると思って、つい焦って先制仕掛けちまった」
「無我夢中だったとしても、もう少し慎重にさ」
女冒険者が男冒険者に指摘する。
分かったって、と軽く流す男冒険者に女冒険者は全くもう、と怒りよりも諦めの色を濃く滲ませる。
そしてそれよりも今は目の前の問題にどう対処するかを考えた。
「鼠もそうなんだけど、私の
「確かにこの集落跡に最近、誰かいた形跡があるんだよな。小さな足跡がある」
「もし人なら話が通じるタイプだったら良いんだけど…。すみませーん!誰かいますかー!?」
女冒険者はそんな一縷の望みに賭けて、室内にいるかもしれない人間にコンタクトを試みる。
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