第3話 逃げ場のない老人
心臓の鼓動が速くなっている、できればこのまま死んでしまいたい。
「お父さんあと少しで職員の方が来るから、逃げないで下さいね?」
『……』
「あら?無視?私もすぐに行きますから大丈夫ですよ」
私は何も過ちは犯していない、愛する人と結婚して会社でも部下に慕われて尊敬されるような事をして。息子や孫にもちゃんと愛情を注ぎ、他人にも優しくしていたと言うのに、なぜ私のようなものまでも連れて行かれるんだ。
『わしはまだ、生きていたい。』
襖を開け音を立てずに外へとでた、あてもないどこにも行かない。ただ少しだけでもいいから逃れたかった。
道路へと出て家とは反対の方へ小走りで行った。
『まだやりたいことが…孫の成長も見たい……まだ妻といたい…まだ』
背中に何かが当たった、そこから熱を帯びてきた。
「すいません!この人昔から走るのは得意で」
「いえいえ、すこし手荒くなってしまいましたが回収いたしますね。」
「ったく、職員さんに銃まで持たせて。親父もぉ良いだろ?感謝してる良い施設に行けるのは俺からの親孝行だ」
こんな形の親孝行があってたまるか
だれか、だれでもいい
まともな考えを持った人よ
せめて無実の人だけでも
ゆるしてくれ
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