鼻血。
「あ〜カッコ悪…。」
そんなぼやきすら、鼻に脱脂綿が詰まっているせいで鼻声で少し滑稽だ。
保健室のベッドの上で、天井を見つめる。
ふいに、大丈夫…?とカーテン越しに声が降ってきた。
幼馴染の聞き慣れた声。でもこんな状態で会いたくなかったなぁ…。
「あれ、なんでここに?もしかして走馬灯…?」
…なんてふざけてみたりして、せめて面白い雰囲気に持ち込みたい。
え、死んじゃうの?と声が降ってくる。
ちょっと近いとこから。ベッド周りのカーテンから、顔だけが出てる。
「ぶっ…はぁっ…なにやってんのお前…。」
思いも寄らない登場の仕方に、鼻の脱脂綿が飛びそうになる。やめろ、これ以上面白くしなくていい…物事には限度ってものが…。
面白いかと思って。とにやりと笑う彼女の狙いはばっちりだ。あぁ、確かに、面白かった、まじで。ちょっと…やばかった…。
なんか、すごかったね。みんな集まってた。なんて、今度はちょっと心配そうに話す彼女の顔を見るのが恥ずかしくて手の甲でさりげなく鼻あたりを隠す。
「なんだ、見てたのかよ〜。派手にやっちまったもんな〜。」
サッカーの模擬試合中に、ヘディングしようとして1年と接触して、2人で共倒れしかけた所にどういうわけか1年の頭が俺の鼻に降ってくるという展開…。
1年はぴんぴんしてるけど、俺は鼻血が出て、途中退場、そして保健室へ。
処置を終えて、保健の先生が職員室に行っちゃって、通りすがりの彼女にちょっと様子見ててなんて声をかけてったらしい。
「いつも思うんだけどさ、他の場所から血が出たら、みんな割と大騒ぎになるし、心配するけどさ、場所が鼻ってだけで、なんで最終的には笑われるんだろうな?」
ぷっ…と彼女が笑う。確かにね、と言いながらやっぱり笑う。それだよ、それ。結局笑うんだ。
「鼻から出たって血は血なんだけどな〜。」
もうやめて…面白い…。身体を屈めて笑う彼女がとても可愛い。やっぱ、こっちの方が断然いい。
見てたのかよ、なんて言ったけど、知ってた。共倒れした瞬間、渡り廊下にいたお前が、俺を見て思わず持ってた段ボール落として慌ててたこと。
その時の心配そうな顔。泣きそうだったな…。
出たのが鼻血で良かったのかも。
笑い話にできるから。
こうやって、俺の隣で笑っててよ。
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