第六十六話 凶星七席(きょうせいななせき)
アリアは小さなベッドの中で、天井をみていた。
「ははうえ……」
物心ついた時から、母は隣の部屋に居た。
いつも、書類に囲まれて。いつも呼べば、微笑みかけてくれる。
愛情も優しさにも溢れた、自分の母親。
仕事のし過ぎで、顔色が優れない自分の母親をずっと見続けていたから。
自分は魔王になったというのに、自分が怒ってははうえの仕事を増やしてしまった。
「ままならぬ……」
左手を軽く二回、開いて結んで。
そっと、眼を閉じ。
夢幻の世界にただよう、大罪の星達はそれを心配そうに見ていた。
いつもは、弾頭が如くの邪神の王達も何処かもの静かに。
夜は、王達の支配する世界だと言うのに。
今日は、アリアの様子を見ながら頬杖をつき苦笑する。
「暴食殿」「なんだ、嫉妬よ」
「気持ちは判るが、精々軍勢を出すで留めるべきであったな」
「そうだな、久方ぶりに名を呼ばれ。喜びの余りつい……な」
「ソナタの力は、街で使うには少々厳しいと言わざるえん」
「確かに……、しかし名を呼ばれずその力を使う事で出力を押さえればある程度役には立っているようだが。やはり、我は名を呼ばれたいのだ」
判るぞと、各大罪も無言でうなずいた。
怠惰だけは、割と呼ばれている故余り気にした様子も無かったが。
「我ら大罪の星を背負うには、アリアちゃんは優しすぎる」
「しかり」
「しかし、我ら全ての星を背負えるもの等。もう二度と世にでるまいよ」
「しかり」
「ラクセイ殿は、よく止めてくれた」
「左様、我らのアリアちゃんに連れ添ういけ好かない男ではあるが。今回は、役にたった」
我らの主として、その力を用い。いずれ、我らを束ねる最強の邪神となって頂かなくてはならぬ。
「天を穿つ、それだけを求め闇の頂点に座す我ら大罪が目指すのは勇者を出させない事」「しかり」
「圧倒的な闇で、この世から神を消し去る事」
「そうだ」
「人にも魔族にもキャパはあり、そもそも星という巨大な邪神の力を一つでさえ思うままに振るえる存在が現世に現れる事自体が一万年に一度あるかどうか」
「故に、我らはアリアちゃんに関する事のみ同盟を結んだ」
「全ては、我らの宿願を叶えんが為」
「我ら闇に属する全ては、今こうして指をくわえてあどけなく寝ている彼女の為にある」
「左様」
「しかし、こうしてみると七星を背負えるお方とは思えないほど可愛いな」
誰かがそう言えば、全員の顔がにやける。
「抜け駆けは許さぬぞ」
「勿論だとも、だからこうして音の出ないカメラも保存用の魔導水晶もこんなに用意したのだ」背景の禁書と同じぐらい保存用の魔導水晶が床に転がりまくっている憤怒。
その様子を、他の王達がゲッソリした顔で憤怒の王を見た。
「そういえば、閻神とダンマスはどうした」
「闇のエネルギーをたっぷりくれてやって、馬車馬の様に働かせているが?」
「報酬は、流し込む様にやるが休みは無いと中々鬼畜ではないか」
「我らは邪悪なのだから、鬼畜は誉め言葉であるぞ」
それもそうか、ガハハ。
「本当は報酬も絞って限界まで働かせたいが、それではアリアちゃんに怒られてしまうからな」「確かに」「如何に大罪の星と言えど、主の意向に従わぬのは同盟に反する」
全員が深くうなずいて、もう一度眠っているアリアを見た。
「我らは、アリアちゃんについていくぞ」
「無論だ、裏切りは許さぬ」
「いずれ星は八になる」
「あぁ」
「星の名はどうなる?」
「妖星とか面白そうだ」
「それは、本人が好きに名乗れば良かろう」
「それもそうか」
「魔王か…、貴女はそんな小さな椅子で終る方ではない」
「我らがこんな事を言ったなどと、魔界で知れれば笑いものになるやもしれぬが」
「幼子よ、幸せであれ」
そういうと、七星の邪神の王達は次々に姿を消していった。
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