第五十三話 ろくでなし錬金術師

「シュテインはいるか?」のしのしと相変わらずのアリアちゃん。


「あら、アリアちゃん。いらっしゃい♪」


見た目だけは、そこそこのシュテインがアリアちゃんを歓迎する。


「今日も面白いものを見せて欲しい」「はーい♪(魔王様案件だからサボりの口実としてはばっちりよね)」


「始めはこれね~、これはお風呂用の玩具よ」そういって、アリアちゃんにものすごく不気味なゾンビの頭だけを模したものを手渡す。


アリアちゃんは両手りょうあしで抱えてくるくると回しながら、「なんだこれは」といいシュテインがにんまり笑って。それを、貸してと受け取ると用意していたタライの中で頭頂部を叩きながら説明する。


「それは、ゾンビの頭を模したお風呂用の玩具よ。まず頭をこうして叩くと、口から泡が出ます。疲れを癒して、肌艶が良くなる素敵な泡よ♪」


まるで口から泡を吹いて倒れている様な感じで、泡が吐き出されタライを満たす様な量の泡が出て来た。


確かに、アリアが手をつっこんでみるとタダでさえ卵肌のぷりぷりだった自分の手がモチモチ度を上げ。疲れも溶ける様に飛んでいく……、見た目に眼をつぶればかなり素晴らしい。


「良いではないか、見た目以外」アリアちゃんは素直に言った、でもシュテインはにっこり笑ったまま目力だけで「見た目は変えませんよ」的な意思を伝えた。



「後は、これなんかどうかしら」続いて渡されたのがニャラルと呼ばれた白い砲身に金のレリーフで可愛い猫がデザインされたロケットランチャーだ。



「ニャラルではないか」それは前にも見たというアリアちゃんの顔の前で人差し指をちっちとふる。


「そう、これの新型。ニャラルツーよ」とその横に猫がすわっているデザインの、しかし顔がどうみても五十代ニートのオッサンの顔を無理やり猫にしたような酷いデザインに磨きかかかっている。


その酷すぎるデザインセンスに、うぇ~となるアリアちゃん。


「このニャラルは、どんな怪物も猫にする。そして、ニャラルツーは人にも魔族にも利くようになってるわ」


「ほう!」その瞬間眼がきらきら輝くアリアちゃん。


「そうね、そこのラクセイに撃ってみて」「すまぬ」それだけいうとにゃーという射撃音(猫の鳴き声)と共にぶっ放すとラクセイが煙に包まれて……。



「おぉー凄いなこれは」アリアちゃんの眼の輝きが一段とキラキラしだした。


そこには、猫耳猫尻尾のラクセイが居た。

「効果は一日、猫の身体能力とかも手に入るわ」と三階からも無傷で着地できて、通風孔にも入れて、手の爪を意識すればダガーくらいには伸ばせるし。切れ味もその辺のロングソードがぶった切れる位あるわよ。


「おお~」「他にも、ネズミを見たら追いかけたくなったり。普段の指が肉球みたいになってものが掴みにくくなったり……」


「おふ……」「一番の欠点は男も女も猫になった時に、首から下が着ぐるみみたいになる事ね」


眼の前で、へそ天で転がっているラクセイのお腹を撫でながらシュテインがニャラルツーの説明をした。



「とりあえずニャラルツーはしまっといて欲しい」それだけ魔王がいうと、残念そうにしょうがないわね~と戸棚にニャラルツーをしまった。



「そういえば、そっちのそれはなんだ?」やけにラバーな質感のクラッカーがこっそり横においてあるのをアリアちゃんが見つけた。「気になる?これはね、バニーフラッシュって言って男女共にバニーガールの衣装に強制的に二十四時間するものよ」



その瞬間、お腹を撫でられていたラクセイが急に青ざめて脱出しようと試みる。


「残念だけどニャラルツーと併用はできないのよね、残念だけど」


ほっと、胸を撫でおろすラクセイ。「併用できるようにしてほしい」ワクワク顔でいう魔王様、任せなさい☆彡と親指を立てるロクデナシ。




ちなみに、その後。人間の王様が謁見している最中に強制バニースーツにしてもっこりになったそれを笑ってしまった貴族の首が飛んだとか飛ばなかったとか。

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