第五十四話 回転寿司ヤシマ
今日は、アリアちゃんがいつかの弱い飛べる部隊を労う為に回転寿司ヤシマに来ていた。
もちろん、この寿司パーティが終わった後で現金のボーナスを配って終わりになる。
その為の場所や資金は、ママンが用意した。
なので、便乗したパパンやらシュテインが何故か居る以外は非常に和やかな空気に包まれていた。
ちなみに今パパンの真似をして、右足をテーブルの上に乗せてジュースのコップを掲げている。パパンはズボンだが、アリアちゃんはスカートでそれをやっている為当然小さめの種族の座っている位置からは尻にまおうとひらがなで書かれているパンツが丸見えになっている。だが、努めて視線をそらし見なかった事にして寿司をぱくついていた。
ちなみに、このヤシマであるが。読者の皆さまが思い浮かべる様な回転ずしとはちょっと違っていて皿が回っている下部分は人力だ。漁師の皆様が気合をいれてとってきた新鮮な海鮮を使って作った寿司を、ガチムチの漢と乙女の職人達が握り。皿の下から、暑苦しい声と共にレーンを回転しながら運ばれてくる。
ちなみに、クソ美味い。
大将ヤシマも、魔王様が来ると聞いて歓迎の為にクジやらジュースやらを用意したのだが。漁師たちは漁師たちで、ド派手な大漁旗を暴走族の様に。いや、実際ほぼ漁船使ってるだけの暴走族と言ってもいい。
今回は、軍部のクラーケンやシードラゴンも協力したため。投網を引くのではなく、仕掛けた投網に強面の怪獣が追い込み漁をかける方式で。むしろ、網を持ち上げるのに苦労する位には取れ高があった。
このヤシマ専用倉庫は、時間停止かつ瞬間冷凍機能がついているのだが。店始まって以来、仕入れで倉庫がシシャモ一匹入らない位になってしまった。
それをみた、大将が遠い眼をしながら。
(こりゃ、しばらく仕入れず営業できるな……)と呟いたとか呟かなかったとか。
いつもなら、あんな弱卒に寿司なんて食わせるなんてもったいねぇと叫ぶ連中も居たが。今回は「人間の兵士に、地獄を見せた」という意味で。現地の兵士からも「是非、俺達の上にあれをまかないでくれよ!」とのありがたい言葉を頂き。
信賞必罰形式にのっとり、こうしてお寿司を召し上がっている。
そんな訳で、絶好調でひょいひょいと食べても居ないのに皿をテーブルの上にあげていたパパンとアリアちゃんだったが。
「おどれら、それちゃんと食べれるんやろな?」と大将にアイアンクローで頭をギリギリとつかまれ。「自分で食う分以外をうちで取る事は許さんへんで!」
「問題ない、大将」とアリアちゃん、反面青ざめるパパン。酔いは一気に冷めた様だ。
(最近、黒騎士やら剣やら作って足りない素材は魔力で持ち出しだったし)
そのモミジの様な手で醤油をチョンとつけると、自分の口に運ぶようなしぐさで手の平に出した暴食の口でモリモリと食べてガンガン皿の上の寿司が減っていくのを見て。
「おっ、アリアちゃんいい食いっぷりだねぇ!」とさっきまでアリアちゃんとパパンをアイアンクローして不機嫌になっていた大将がにっこり笑って「おう、お前ら魔王様は寿司が足りねぇってよっ!。 気合いれて作れ!!」
「「「「「「「「応っ!!」」」」」」」」
職人達も軍艦やら握りやら、炙りやらを実に手慣れた手つきで作っていく。
無論、部下達もそれをみて遠慮してたら魔王様が俺らのご褒美食っちまうぞと笑顔で茶化し。めっちゃ楽しくやっていた。
パパン一人を除いて←ここ重要
「んで? 元魔王様はいつその山盛りに取った寿司をおめしあがりになるんで?」
パパンには引き続きアイアンクローをかまし続けている店主、顔中に血管が走って紅いオーラが見え。そろそろ、背景が荒野になるかもしれなかった。
この店、店長から職人まで全員が旨い寿司を出す事と例のブートキャンプで鍛えぬく事を生きがいにしていて、飽きれる程強くなっており。というかもうこの魔国で、魔法職を除いたら幼稚園児から引退老人まで全員ブートキャンプがブームになっており。国民総兵士どころか、国民総将軍位にはなっているのである。
最初は、バクバクと食べていたパパンだったが段々ペースがおちてお腹がトドになってきており限界は近いと思われた。
ちなみに、酢飯を作っている係は各テーブルでどの位食べられているかは把握している。
一流の職人は、秤にのせた時狙った分量に一グラム単位で一発で揃える事ができるので必然。目で見ただけで、誰がどれ位食べているのか判るのである。
(元魔王様は酢飯だけで六キロは召し上がっている、それに引き換えアリアちゃんは幾らなんでも食べてる量が合わない……)
かといって、机の下に隠している訳でもなければ実際に「寿司自体が収納でない所に消えてるのは確か」。
「魔王様、サービスの玩具クジです」そういって、クジを渡す時にその秘密を飯担当が知って。大将には、〇をジェスチャーでおくったのだ。
(アリア様は、自分の口ではなく手に別の口があってそっちで食べている)
顔を緩ませている事からも、味は判るのだろう。
ならば、それは客の食べ方の問題でありマナー違反で無いならOKと言う事に他ならない。
その日、パパンだけがアリアちゃんの食べる量に戦慄したのだった。
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