第五十話 繁盛俺様
あのエキシビジョンマッチ以来、流行に流行りまくっている駄菓子屋俺様。
というのも、あの黒騎士お手製のポン菓子を売っているのがここだけという事もあり長蛇の列が今日も続いていた。ちなみに、最後尾は五時間待ちだ。
そこへ、アリアちゃんがいつもの様に列に並ばず入ってくるが魔王様限定で誰も怒りはしない。サンタの様な自分の何倍もある大きさの布袋をラクセイに持たせていた。
ちなみに、なんだラクセイか……との呟きがラクセイの耳にも入るが。ここに並んでいるのは黒騎士ファンなので、黒騎士に来てほしかったのだと思えばラクセイも無言で会釈をするにと留める。
「たのも~」手をふりふりとするアリアちゃんに、輝く顔の店主。
「おう、アリアちゃん。繁盛してんぜ、黒騎士お手製のポン菓子」
そう、あれから店主はアリアちゃんから定期的にポン菓子を貰っている。
「店主、変わりにきな粉棒やらガチャガムなんかを貰っていく」
「もちろん、何をどれだけもっていったのかは見せてくれよ」
という契約を元に、ラクセイが布袋の中身をポン菓子の在庫につめ。空になった布袋に店主に確認してもらった後駄菓子をつめていく。
そのあいだにも、店員のゴブリンがせっせと黒騎士印のポン菓子を売って列を消化。
アリアちゃんが店内を見渡すと、戦うホビープラモが置いてあった。
「そいつは、男の子向けだぜ?」眼をキラキラさせているアリアちゃんに店主が声をかけた。そこにはギジェルが武器無しで拳を燃やして体を開いて構えているポーズをしている玩具があったのだ。
「女の子用はこっちだ」と指を指すと、錬金術ギルドや魔法省のトップを玩具化したものが売られていた。それ用の着せ替え等もあって、アリアちゃんは非常に楽しそうだった。
ラクセイのも売られているが、埃がうっすらと被っていて余り売れていないのが判る。
それを見て、若干落胆するラクセイ。
やはり、男女共に搦め手ではなく。真正面から戦うタイプが尊ばれるのが、この国の文化とも言え仕方ない面はある。それでも、ラクセイは魔王近衛になれる程度には強いのだ。
「あの戦場ですら、魔法無し、スキル無しに拘り続けたギジェルの旦那がスキルも魔法も使えた事が驚きだがよ。武器のみで、ずっと軍務卿まで登りつめて。しかも、あの年になるまでずっと魔王軍幹部で居続けた事が黒騎士によってバレた一件は貴族共もドン引きだったらしいじゃねぇか」
「そうらしい」言う訳にはいかないのでアリアちゃんはしらばっくれる。
「エキシビジョンマッチを見てないのか?」「お昼寝してた(本当はステージ上に居た)」「そいつはもったいないな」店主はそういうと苦笑した。
「ラクセイ、黒騎士は強かった?」とアリアが尋ねれば「正直あれが自分と同じ魔王側近かと思うと今からでも修行し直したほうが良いと思う程度には強かったです」と答える。「お前は、そのままで良い」アリアちゃんはそれだけいうとモミジのような手をずいっと出す。ラクセイはすかさず、限界までその手で冷やしたラムネをその手にのせた。
ひんやりしたラムネ瓶を見つめ、「黒騎士は剣しかできぬ、お前の様に便利ではない」それだいうとげふっと下品にげっぷをして瓶を回収籠にそっといれた。
店主はそれを見て「ラクセイ、あんたを重宝するアリアちゃんの気持ちが少し判る気がする」それだけいうと、自分も店員に任せていたポン菓子を売る作業に戻っていった。
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