第四十三話 中央病院マーブル
院長マーブルと打ち合わせをすべく、中央病院にやって来たシュテイン。
「これはこれは……、お久しぶりです。シュテイン様」
どこか胡散臭そうな、ヒョロガリの見た目に腰は折れ曲がり老婆のようだが眼はぎらついてまるでゴブリンの様なマーブルが丁寧に頭を下げる。
読者の為に断っておくと、見た目があれなだけで仕事ぶりは誠実そのものであり、中央病院の医師の中でも割とまともな部類である。
逆に言うと、このマーブルという男は「見た目だけは、かなり醜悪な部類」。
そのおかげで大分人生損している感があるが、こればかりはどうしようもない。
だからこそ、マーブルは誠実と時間で信用を勝ち取って来た部類の医者だ。
「さて、時間は有限だし貴方相手に回りくどい事は言いたくないしで用件だけ伝えるわね」
「はい、私もその方が助かります。暇ではないので。もちろん、医者と軍人は暇な方がいいに決まってはいますがね」とくしゃくしゃな顔をくしゃくしゃにして笑う。
「脳筋どもに知られたら、消されるぞ」とシュテインも笑った。
「それでだな、魔王様が作った百貨店にクリニックを入れて欲しいというのが今日の要件だ」マーブルが片目をじろりとあげてシュテインを見る。
「もう少し具体的に、お願い出来ますかな?」
いわく、熱中症等や緊急搬送にならない程度の調子の悪くなったものを先にある程度治療して病院に送る為の設備が欲しいと仰せだ。
「無論、人員についてはむしろ取り合いになったが。検査魔道具や薬品などは私も手配したさ、だが私にも手配できぬものがある」
「本職の経験がある程度ある医者とか……ですか」「察しが良いな、その通りだ」
ふむ、とひとつ頷くと。「こっちでも、その席を巡って荒れそうではありますな」
それだけいうと、さらさらと辞令を書き始め。それを、引きだしにいれた。
「魔王様には来月末までには、必ず医者を手配しますとお伝えください。後、シュテインさん。申し訳ありませんが、クリニックの医師が手配した薬や魔導器具等は優先順位を高くお願いいたします。特に、塩飴をきらせる事があれば我々は即撤退しますぞ。塩飴はアリア様の大好物の一つですからな」
それだけいうと、ソファーにぐったりと腰をかける。
「どんな事があっても、塩飴だけは切らさないと約束しよう。無論、他のものも優先順位はあげさせて頂くが」
机の上にあった、冷めきったお茶を一気に飲み干す。
「中央病院の方もお願いしますよ」「少なくとも、今まで遅れた事はない筈だが?」
お互い少しの間、視線が交錯する。
「それもそうだな、マーブルが院長の間は心配あるまい」「それは、こっちのセリフですよ。シュテインさん」お互いがニヤリと笑う。
「所で、塩飴の袋につけているなんちゃって雑学やなんちゃって占いやなんちゃっておみくじの他に何かつけたら喜ばれそうなものはあるか?」
「巷で噂の、黒騎士様プロマイド等は如何でしょうか?」
「それはいいな、是非魔王城にかけあってみよう!」
この後、魔王様が顔面パズルになるのだがそれはまた別の話。
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