第三十八話 黒騎士物語

※今回多めの(は内心や説明が入ります)。



ガチャリガチャリと音を立て、黒光りする漆黒の鎧が中庭を歩く。

彼女の名は黒騎士(という設定)、中身はアリアちゃんである。


主にどこかの将軍様の様に井戸を使ったりして、城から脱出する為の変装がこの黒騎士姿である。


パパンの宝物庫にあった、全身騎士甲冑を漆黒に染め上げたものを七星天塔の嫉妬でラーニングしたもの。できるだけバレない様に声は低音のイケボ(これも外の劇場で気に入った声をラーニング)、戦闘スタイルは勇者と魔族の剣聖クラマーレの剣術をミックス(これもラーニング)な上でスペックは魔王相当というのだから大概である。



今日も、うっきうきで。ちぴちぴちゃぱちゃぱと腰を振りながら(猫みーむ風)変身し。

城の外に遊びに行こうとしたら、城の兵士に掴まったのが事の発端である。


「そこのモノ所属は!」「我が名は、黒騎士。魔王様の側近である(本人」

「聞いた事が無いぞ!」「当然だ、我は魔王様の影。用事が無ければ表には出てこない存在だからな(バレたらこの姿で遊びに行けなくなるための言い訳」



そこへ、通りかかるギジェル。内心、ウッとなる魔王様。



「魔王の側近というのなら、その力を示してもらおう」


(操縦桿のおじさん余計な真似をっ!)←本心


「良かろう、といっても俺は剣しか使えぬがな」


すっと、ロングソードを水平に構える。


(あれは、クラマーレ流。蒼槙の構え……)


ギジェルも、魔王にとっては面白いだけのオジサンだが軍務卿を務める叩きあげ。武に関してだけなら、魔王より遥かに勤勉。


「貴殿、名は?」「俺は、魔王様の影。黒騎士なり、名等不要だ(実は考えていなかっただけ」



瞬間、ギジェルと黒騎士が鍔迫り合いになり。発生した圧だけで兵士がごろごろと吹っ飛ぶ。


「クラマーレ流、中々の猛者とお見受けする(クソ、あのお子様魔王。こんなヤバい奴を秘匿して戦争面倒とかいってやがんのか!」


「貴殿は、どの立場のものか判らぬが随分と老いぼれた様だ。素晴らしい技に、力が見合っておらぬ。(適当に合わせていってみる、昨日そんな映画がやってた」



チィンガキンと何合も剣をうちあう、ギジェルと黒騎士。


「まるで、最盛期の剣聖と戦っている様だぞ。(つぇぇぇ、何だこいつ」

「ここでは、強さこそが法。魔王様の側近が弱くて務まる訳も無し、ましてや俺は剣しか使えぬのだから。(大ウソ」


その、恐ろしい程洗練された技の応酬の間に会話が続く。


「ちなみに、貴殿。今日の業務は?」「魔王様に頼まれた、チューペットとドーナツを買いに外へ出ようとしたら。一兵卒に止められ、貴様に力を証明しろと言われたから迷惑している。さっさと貴様を片付けて、買い物に行かねばな。(早くせんとくじ引きが終わっちゃうこのクソ頑固ジジイ」


「俺は、クラマーレ流で長く修行をしてきたが。貴殿の様な使い手は知らぬ」

「当然だ、習った訳ではなく。戦場や道場をチラリと見ただけの我流なのだからな」


※七星天塔を使って視ただけなので、嘘は言っていません。


全身で気を練り上げ、二回り筋力が増大したギジェルが不敵な笑みを浮かべた。


「強さこそが法……な」「時間もおしている、少し本気を出そう」


ギジェルの額から汗が地面にぽたりと落ちる、いやマジでつぇぇぞこの黒騎士。

ステータスは俺と同じ位だろうが、技の練度が全然違う。


(何もんだ)


(憤怒を使ってステータスをあげよう、お出かけ用のよわよわステータスだと倒すのに時間がかかっちゃう)


甲冑の全身に紅い紅いラインが幾つも走っていき、全ステータスを魔力を投じて十二倍する。


「先ほどと同じとは、思わない事だ。老兵」


ギィィィンと、一合うちあう。それだけで、ギジェルの剣だけが折れて城壁に刺さった。


(反応速度も格段に上がってたぞ、これが黒騎士殿の本気っ)


「貴殿が、魔王様の側近である事は認めよう。そこの兵、黒騎士殿を外へご案内しろ!」「はっ!!」


「再び、稽古をつけて頂きたいものだ。(この黒騎士と戦えば俺はもっと強くなれる」

「それは、魔王様に言ってもらおう。俺は、魔王様以外の命令を聞く気はない(めんどうだからばっくれたいでござそうろう」


「必ず、そうしよう」

「ふっ(うわっ汗くさ、後でお風呂いこっと」



何故か、すがすがしい笑顔を浮かべたギジェル。

口数は少ないが、さっさとお出かけして居なくなりたい魔王様。



<明日へ続く>

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