第三十七話 宮廷魔導師長

ここは、宮廷魔導師達が集う。魔法省、その中で紫髪チリチリヘアーの宮廷魔導師長ギブソン・キャロライナが執務机の椅子にヤンキー座りで報告を受けていた。



「おう、ごくろう」


この宮廷魔導師長実は妖狐で、スキル群も思考回路もかなりあっちに偏っている。


ちなみに、彼女の人生哲学は「筋肉は裏切らないが、定期的に可愛がってやらないと直ぐ拗ねる」というもの。



重ねて言うが、彼女は宮廷魔導師長だ。


基本的に、何処でも下着で生活しているが。戦場でもその恰好なのは、彼女の固有ユニークスキル(マッパー)が関わっている。


マッパーはその名の通り、脱げば脱ぐほど全スペックがあがると言うモノ。逆に服や鎧を着るとドンドン弱くなってしまう。


筋肉オタクな上、そんな固有スキルを生まれつき持っていた為基本的にこの格好で生活する事になれてしまっているのもある。


自ら鍛えるのも、筋肉を見るもの大好き。


だから、所属が魔法省というがり勉の宝庫みたいな場所で彼女のお眼鏡にかなう筋肉なぞいる訳が無い。


結果として、常時不機嫌の様な顔をして仕事をしている。


彼女の固有ユニークスキルマッパーは、当然魔法の威力もMPの最大値も押し上げる。

だけではなく、筋力も速度も上がる。


全裸になれば、あの鍛えられた後のラクセイともタメをはれる程度には強い。

だが彼女にも羞恥心の欠片位は残っているので、こうして申し訳程度に下着をつけているというだけだ。


ちなみに、彼女は同時に二万近くの魔法を待機させておけるほど魔法にも長けている。

その魔法の形状が、彼女の妄想の産物でなければもっと良かった。


彼女が戦場に立つとき、筋肉が降る等と揶揄されるのだから。


そもそも、魔王様の七星天塔でもそうだが固有スキルというのはこの世界ではまず持っている者は人も魔族も殆ど居ない。


殆どの生き物は、己を鍛えて後天的に魔法やスキルを得る。


固有スキルは生まれた時からもっているし、後天的に覚える事が不可能なスキルにあたる。


故に、絶対的な能力に等しい程強い。基本固有スキルを一個持っていたら、魔王候補になれる位には。※七星天塔は七つの大罪固有スキルセット


問題は、スキルに付随するデメリットの方も強烈なものが多いと言う事。

※七星天塔にはデメリットはありません、しいて言うなら使う度に後ろの邪神の王達が喜びの声をあげるのがうるさい位。



例えば、エルダーリッチのジェフが持っていたイナクナリナサイはあらゆるものを消去する固有スキルであった。だが、そのスキルのデメリットは自身の存在がどんどんと消えるというもの。自分より強いものを消そうとするほどに消耗が早く、部下からも世の中からも忘れ去られ命ごと消し飛ぶというもの。


以上の事から判る通り、マッパーは服を着れば弱くなるので冬などでセーターやマフラー等を大量に着ようものなら最弱のホーンラビットの半分のスペックまで落ちる。


彼女の両親は、固有スキルの内容を見た時に頭を抱えた。


なんせ産着を着せている方が、病気にかかりやすく怪我もしやすい。


小学校の時に至っては、スカート捲りのいたずらをされて泣いている友達に向かって。「私には捲るスカートすらないぞ、下には下がいるものだ」といって仁王立ちしたりするぐらい図太くはなっていた。女友達も、彼女の固有スキルは知っているので何とも言えない顔で「そうね、下位はきなさいよ」と自分が泣いているのが馬鹿らしくなって、後日いたずらした悪ガキは粛清にあうのだが。(マッパーは脱いでいれば強い為、まともな魔族が逃げられる訳もなく


ちなみに、成人してからのギブソンはその恰好で酒を瓶でラッパ飲みしながら過ごしている為騎士団からはすこぶる評判が良くない。


さらに言えば、自身の得意な魔術は軒並みスキンヘッドのマッシブなおねぇの形をとる為強さこそが絶対基準のこの魔国においても異質で魔術省の長でありながら部下からも毛嫌いされている始末。


例えば、幻妖樹と呼ばれる悪夢を作り出す樹を召喚したとしよう。普通の幻妖樹は杖の様な見た目をしているが。ギブソンが召喚すると全ての樹がマッシブなオネェとなってしまい。見せる悪夢も普通の樹であれば、その人のトラウマや恐怖にちなんだものだが。ギブソンの召喚したそれは汗だくツユダクの筋肉なオネェにキャッキャウフフされながら全ての体液を搾り取られる現実の悪夢となるのだから。



ちなみに、人間の国の将軍達の間でも蛇蝎のごとく嫌われている。

ギブソンのもう一つのあだ名は、トラウマ製造機なのだから。

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