第三十四話 魔王VS勇者 頂 後編
アリアはゆっくりと、勇者に向かって歩いていた。
勇者は、両腕が痺れ。足が震え、遂に大地に膝を屈した。
「どうした? まさか人類の守護者がそれで終わりか」
期待外れと言わんばかりに勇者の、十メートル手前で止まると呟いた。
「少しは骨があると思っていたのだが、初めて塔を一つ全力で使う事が出来たからもっと先があると思っていた」
エクシズはもはや剣のつかしか残っていない、その刀身は全て蒸発していた。
「勇者、名はなんという?」「マークだよ、アリアちゃん」
そうかと笑った顔は、年相応に見えた。
「それでは、人は守れない」
「あぁ、よく判った。俺に次があるとは思えないが、イヤという程よく判ったよ」
「では、マーク。墓標にはこう刻んでやろう」
ーー人類の守護者、この不完全なる世界の為に散るーーとな。
「俺が戦っていた、魔王が似非だったというのか」
「違う、魔王とはその日その時の魔界最強を指す。その称号に、魔族は全てただ首をたれ命をかけて命令を遂行するに過ぎない。私のちちうえと戦った時、マークとちちうえが確かに世界の勇者と魔王だった」
「今の魔王は、この私」自分の顔を人差し指で指して言った。
人類の守護者は私を倒せなければならない、魔王は勇者に勝つ事が出来ればその時代に敵は居なくなる。何故なら、勇者も又人類最強だからだ。
それを聞いていた、全ての魔族が天に向かって吼える。
「魔族最強の魔王と、人類の希望は常に戦って来た」
もっとも、マークの仲間は弱すぎてすぐに脱落した。
「踏みにじられたくなければ、ただ己を鍛え続けるしかない」
私は最初に聞いたぞ?、レベル上げは十分かと。
「七星天塔:嫉妬 魔眼碧覚(まがんへきかく)」
アリアが告げると、嫉妬の塔が猛る力を天に伸ばし。
アリアの両目に、様々な呪が瞳孔にそって円を描いて地球ゴマの様に回転を始めた。
背後の塔で、嫉妬の塔が両手を拳にガッツポーズをしながら邪悪に笑った。
「勇者マーク、誇っていい。二本目の天塔を起動した」
スッと、アリアが左手をだすとそこには漆黒に染められたエクシズが握られて。
思わず、自身のエクシズを見るが刀身は消えたまま。柄もしっかりと自分の手にあった。
「これは、その聖剣エクシズとまったく同じものだ。属性が闇と光で違うだけで」
この世にただ一つしかない筈の聖剣を、その手で生み出しただと?!
「七星天塔:嫉妬はその瞳にうつる全て、ラーニング可能というものだ。その身の魔力が許す限り」
そういうと、怠惰熊の腕だった龍の頭がそれぞれ漆黒の聖剣エクシズを咥えているではないか。
(おいおい……)
聖剣は、その刀身さえ勇者の輝きで取り戻す。
勇者は、たった一つの聖剣を握りしめ。
そこへ、若き頃のラクセイが地面に手と足を突き刺しながら平地でロッククライミングをやる様な力をただ込めて這うようにやってきた。
「アリア様!」「ラクセイか、お前の部下は無事か?」
「むしろ、アリア様の魔力であっちこっち吹き飛ばされている以外は!」
その瞬間、勇者が白眼になる。
「何用だ」「そろそろ、バスが来るお時間です」
それだけ決死の表情でアリアに伝えると、指と足を突き刺していた地面ごとはがれて吹っ飛んでいく。
「遅刻すると、ははうえに叱られそうだ」「ふざけんな!!」
勇者がそれだけいうと、渾身の力を振り絞って立ち上がった。
懸命に伸ばした、その聖剣の刃は確かにアリアの前髪を一本切裂いた。
それに、驚くアリア。「やはり、勇者はカッコいいな」
それだけ言うと、全ての熊の腕が勇者の全身を切り刻んで跡形もなく消えた。
「神の祝福にて、蘇生するだろうが。心折れずに戦えるのなら、また会おう」
そういって、天塔を全てしまい。トテトテと歩いて行き、そこでアリアが見たものは。
横転して、不格好になった送迎バスの姿だった。
「これでは、保育園に行けんではないか」
それを聞いた、ラクセイは思う。
(無茶、言わんでください)
「そうだ、ラクセイ。あの送迎バスごとチャリ(カイザードラゴンの事)で運ぼう」
(誇り高い龍が、そんな雑用する訳……。するかもしれんな)
「聞いてみましょう」「それなら、遅刻せずに済む」
(問題はそこじゃねぇ)
とラクセイはこの頃から、思えば苦労症だったのかもしれない。
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