第三十二話 酷暑
今まさに、地面に敷物の様になっているこれが現魔王アリアである。
子供というのは、体温調整に気を配らないとばててしまう。
「あづい~」
そこへ、邪神の一柱であるハロルドがやってきてこう言った。
「七星天塔の強欲を使われては?」
「強欲はダメだ、奪い続けたとして。それを加算する先は私になる。あれはペルチェ素子みたいなもので電力の変わりに魔力をかけて、私が設定した概念を吸収する形だからな。ペルチェ素子も冷却面の裏側では熱を大量に持つ性質があるあれと一緒だ」
魔力も、寿命も、美醜も、情報も制限なしの拒否権無し。範囲制限自己指定対象数無限で強奪できるその力は、ガチの魔王でチートと言っていい。
※でもおやつは面白いからという理由でおもちゃのマジックハンドで盗もうとして捕まるスタイル
「では、何か氷魔神やアイスドラゴンでも捕まえてきましょうか?」
腕を鳴らしながら笑顔のハロルド、アリアは首だけをハロルドの方にくるりと向けると。
「部屋に収まらん……、それにははうえに叱られる」
そう、城の部屋はあくまで人間サイズで氷魔神もアイスドラゴンも基本は十メートル以上ある。
「それは、困りましたな」
「お前が、冷気でも吐き続けてくれたらと思う」
「申し訳ございません姫」
一例すると、一歩ハロルドが下がる。
そこで、アリアに電流走るっ!
がばッと音がするぐらい急に起き上がって、親指をかみながらぶつぶつと考え始めた。
「冷気を吐き続ける、ペルチェ素子と同等の構造……。これならいけるか?」
そういって、部屋の隅に置いてあったおもちゃ箱をひっくり返す。
こういった、おもちゃ箱は子供の手でも引けるように紐とタイヤがついていて手で掴みやすくするために長ぼそい穴が空いている。
「ハロルド、魔石を砕いて砂状にし。魔導インクの中に一匙いれて持って来い」
「はッ」それだけいうと、一瞬だけ姿が消えすぐにインクを手に戻ってくるハロルド。
「これで、こうして………こうして。こうでどうだろうか」
おもちゃ箱の両サイドに、魔法陣を描いていく。
最期に底に手を触れて、魔法陣が光りだすと凄まじい勢いで熱を吸い込んでとって部分から冷気が噴き出した。
「ほぁ~」幸せそうな顔で、その冷気に当たっているアリア。それを、驚愕の眼で見ているハロルド。
しばらくすると、そこへパパンがやってきて。「おっいいもの使ってんな」といって持って行ってしまいアリアがフグの様にほっぺたを膨らませた。
しばらくして、ヒルダリアがアリア成分を補給しようとしたら玩具が散乱しており。
「アリアちゃん、おかたづけはどうしたの?」と尋ねると、パパンが私のおもちゃ箱をもっていってしまったのだと説明。
世紀末覇者でもこんな音は拳からでないと言わんばかりの効果音で、ごぎごきと手と首を鳴らしながら。邪神ですら真っ青になるような怒りの炎をまき散らし。「ちょっと、パパンしばいてくるから。もし、私の部下がきたらよろしく言っといてね」とそれだけを言い残し部屋から消えていった。
尚、部下達は部下達で仕事は山の様にあり。ヒルダリアが居ないだけで、一人頭の仕事量は三倍位になる為あちこちから悲鳴があがった。
「ヒルダリア様は何処へ!」「ちちうえをしばきにいったぞ」
「またかぁ~orz」一斉に崩れ落ちる部下達、これで今日の業務はヒルダリアの印鑑待ちで決まりだった。
「ははうえはあの気性だから仕方あるまい、それはそうと空箱を幾つか持ってきては貰えぬか」
空箱?と思いつつも、部下の一人である。ナユタが走って、木箱を三つとって来た。
「魔王様、これでいいですか?」「ありがとう、助かる」
そういって、さっき玩具箱にしたようにすらすらと魔法陣を書いていく。
「これを一つ持っていけ、部屋は暑かろう。使い方は箱を裏返しにして底を軽く叩くとほれ冷気が出て涼しい風が出る」
そういって、自分が魔法陣を書いたものを指さす魔王。
試しに底を叩いて、出てきた冷風に驚くナユタ。
「止める時は底をもう一度軽く叩くと止まる、さて私は自分の分を作るとしよう」
「あの、魔王様。これを売る気は?」「お前らがこの魔法陣を箱にちゃんと間違いなく書けるなら判断は任せる。私は、自分の以外作る気はない」
そういって、新しい箱に魔法陣を書き始めた。
「あの……、魔王様。箱の冷気吐き出し口に、妖怪の口を書くのはどうかと思いますが」
口裂け女や山姥の口から、ゆっくり白い煙の様に零れる冷気がやけに生々しい。
「塗り壁やこなき爺もあるぞ」「そこじゃねぇよ?!」
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