第三十一話 にゃんにゃん動物園

「何故、 狼どもの事務所だけアリア様がいらっしゃるのだ!!」


そう気炎をあげているのは、ホワイトタイガーのパラート。


「何でも、ヒルダリア様の依頼でその日だけ犬のふれあい広場の変わりをやる様に命じられたらしいです」


副官のビーグは、キリリとした顔でそう答える。


思わず、ジト目になるパラート。


「では、我らも!」と隊長が言い出しかけて、ビーグはそれを静止した。


「お待ちください、貴方は虎族の誇りをお忘れか?猫と同様に扱われるなど、恥さらしも良い所ですぞ」


アリア様にとったら、虎も猫もサイズ以外大差ないとは思いますがねと苦笑した。


「そうだろう、そうだろう」にんまりしながら頷く隊長のパラート。


「だからと言って、進んでふれあい動物園でアリアさまをお迎えしよう等と言って部下から苦情が……。あがるわけないですね、他の種族に言われたら戦争案件ですけど」


アリア様だからな~、可愛くて強い今代の魔王様の人気を思い出しながらため息を零した。



「貴方は、猫缶や猫まんまもらって喜べるんで?」とビーグに真顔で聞かれ「アリア様のお手製、猫まんまだったら毎日食べたいが?」と即答でかえすパラート。



はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~とクソデカいため息が出るビーグ。


大切な事なので何度でも言うが、魔族の評価基準はまず強さだ。

その意味で、この魔王様の事を可愛がっているパラートも翼のある虎だけあってクソ強い。魔国の序列でも近衛やら、アリアちゃんやら、アリアちゃんに忠誠を誓っている邪神共をどけて考えた場合かなり上位にはいれる強さは持っている。というか各種族の隊長格は大体序列上位者が占めていると言っていい。


最近は、百貨店のワンフロアに作られたブートキャンプなるトレーニング事務所で魔王並みが量産されており。隊長格の殆どがそこで鍛えぬいた後に地下闘技場でバトルするという、軍部の能力増強具合が可笑しなことになっていて。元魔王様が、本当にただのチンピラ扱いになりつつある。



のだが……、そのブートキャンプはあくまで近接戦闘職やアサシン等の暗殺職等を鍛える事には対応しているのだが。魔法職を鍛える事には対応しておらず、まるで突き上げの様に苦情が届く。



「我らにも、強くなるためのトレーニングルームを!!」


あのヒルダリアでさえ、それが原因で魔国中の魔法職や錬金術師から反旗を翻される等とは想像もつかず(それだけ大人気だっただけだが)。


「百貨店も、トレーニングルームも、まだ建設途中です。当然、様々な施設を作る予定はありますがいっぺんに作れる訳ではありません」と御触れをだして、三か月以内には今作る事が決まっている施設の順番や建設予定等を発表しますので待って頂きたい。と釈明する事で事なきを得たが(期限を区切ってしまった事で)建設や文官や自分の仕事を大幅に増やしてしまった。


だが、ヒルダリアを持ってしてその必死の眼の血走った群衆を見て怖いと思ってしまった事は想像にかたくない。


それで、冒頭に戻るのだがわんわん動物園があるのならにゃんにゃん動物園もあっていいとかグリーン牧場(牛族と馬族)とかもあっていいとか他の施設に関しても陳情が上がりまくった結果。予定していた、フロア数や建物数ではどうやっても足りず、慌てて周囲の土地を買い進めようとしたのだが。陳情をあげて来た連中が首をそろえて「もう、買収しておきました(キリ」



※これである



こういう場合、まず近隣住民の反対があるはずなのだが。何せ陳情をあげて来た奴らの大半が百貨店周辺住民だった為に既に土地ごと売買契約済みかつ新居引っ越し済みで「俺達の施設を早く作れ!」のプラカードを掲げた状態でヒルダリアの前に雪崩をうって突入してきたのだ。



これには、今まで色んな苦情で頭を抱えて来たヒルダリアも予想できなかった訳で。

誰の邪魔が入る事無く、最終的にプラカードを持っていた連中が建設の手伝いまで始めた事で急ピッチで完成。現在、第六棟目の建設に移っている。


騒音で文句を言われるかと思いきや、魔法師ギルドの連中が「遮音の結界を構築して置きました、衝撃とか他にも対応しております」といつもだったらごねまくるはずが既に全員総出で全ての仕事をほおりだして作業していたので思わず監督役がずっこけたという経緯がある。


そんな訳で、現在ふれあい広場専用棟である第六棟の建設が冒頭の様な会話があちこちでされながら関係者ほぼ全員で色んな汗を流して工事が執り行われている。

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