第二十七話 魔王様畑を作らせる

私の名はニアス、私達は今魔王様陣頭指揮の元。

広大過ぎる、芋畑を作らされていた。



「え? 何で?」「保育園でみんなと一緒にやった、芋ほりがクッソ楽しかったらしい」「あそこにあるの、魔導重機ですよね?。 ニ十トンクラスの」



「こんなバカみたいな広さの畑作ったら、ヒルダリア様が黙ってないだろう」

「いや、今回重機を持ってきたのはヒルダリア様だ」「なじぇぇぇ?!」


思わず声が裏返る、ニアス。


ちなみに、首都城壁の外。直ぐ西側エリアの荒野を片っ端から土壌改良し、現在北海道四つ分の面積のクソ程デカい畑になっている。


畑同士はある程度距離が離されており、規則正しく正方形がならんでいて。重機すら通せる道が首都より美しく整備されているこの畑。


邪神や悪魔達は例によって、空を飛んだり。魔法を用い、重機を駆使する農業組合の連中とぶつかるかと思いきや。


「いい畑にしろ、それが出来なきゃぶっ殺す」と脅し。

「オラたち良い畑にする以外能がねぇんだから、良い畑にするっぺお前さらも協力さしろ」


「いいだろう、我らの主の為。良い畑にする為に手を貸そうではないか」


とガッチリ握手しながら、この広大過ぎる畑を作った為。

むしろ、農業組合の連中が「オラ達の畑より、土壌が良くて草生えるべ」となっていた。

しかも、本来は殺すのが専門の悪魔や邪神達ではあるので。「魔王様に認められていない植物が生える事など断じて許されるはずがない」と雑草等本当に許されていない植物や虫やタニシ等はねだやしにされ「結果として、信じられない位無農薬で育ちが良い」という意味不明な畑が出来上がっていた。



しかも、この邪神達あろうことか有害紫外線等も「殺し」なんなら暑さ寒さも「殺し」。呆れた事に、本当に必要な日照や温度以外の部分を全て力を尽くして殺しまくった結果。

「殺し尽くしてるので悪魔や邪神はハッピー、魔王も芋ほれてハッピー、ヒルダリアも食料面で随分悩みが減ってハッピー」と意味わからないぐらい幸せを量産していた。



この畑に眼をつけた、悪徳商人達まで「殺し」まくった結果。農業組合の連中からも適正価格で買い取る商人だけが残ったとハッピーになる有様。



その、畑の一番端っこで魔王様とそのクラスメイト達は掘った芋を丁寧に洗って不燃布にくるんだ上でツボ焼きにされたものをみんなでほおばっていた。


「アリアちゃん、この芋。やおやさんで買ってきたのよりおいしいね」そうゆかりちゃん(魔王の友達)が笑って言えば。「うむ、蜂蜜をまるかじりしている様な甘さがたまらん」とか満更でもない様子。


それを見ていた、麦わら帽子の悪魔と邪神のテンションが爆上がりして近くの三角巾をかぶった農業組合のおばちゃんと肩を組んで民謡を歌いだす始末である。



ではこの畑を作る時に誰が一番泣いたかと言えば、文官たちであった。

畑を欲しいと魔王様が喚いたのは金曜であり、休み無しで働かされ屋根の変わりに魔法で結界をはるのに一日かかった上。畑を作った場所は城壁の外であり、結界をはり終わるまでは二十四時間モンスターに襲われ続けたからである。

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