第二十五話 強制バカンス

「そんな訳で魔王様の命令で、軍部は全員バカンスに行くことになった!」


ものすごい嫌そうな顔の軍部一同、ちなみにそれを発表しているギジェルも遠征や戦争ならともかく何が悲しくてバカンスに出かけなければと不服でいっぱいの顔をしていた。



ちなみに、初日はビーチフラッグとキャンプファイヤーだ。キャンプファイヤー用に大量の肉や酒をあのケチで有名な財務官があっさり出したのも妙に気になったがそれ以上に邪神や悪魔どもや近衛さえ「お前らがイメージしてるビーチフラッグとキャンプファイヤーじゃねぇから絶対楽しめる」と太鼓判を押していた為。


「何かある」ギジェルだってあの魔王様の思い付きに散々付き合わされてきた歴戦の中間管理職であるからして。おたのしみぷろぐらむと書かれた封筒を見つめながら、楽しめなかったらあいつら絶対ひでーめにあわせてやるっ!と拳を握りしめた。


そして、海に到着し。封筒を開けた。



「えー何々……、参加者は全員武器鎧の類は持たず魔法は禁止。水着着用の上己の肉体のみを使って旗をとってくるべし。旗をとれなかったものは、障害物の残骸か生き物を持てるだけ持ってスタート地点に戻る。至って普通じゃないか」


はぁ……と溜息をつきながら、眼を進めていく。


「障害物は沢山用意してある、旗をとって来たものには魔王様から特別賞を与える。旗のある場所は……え? グリフィス帝国旗艦だぁ?!」


その言葉に、軍閥全員の表情がえ?となる。


「戦争はやりません、でも皆様がビーチフラッグなら楽しめると黒葬やちちうえに聞きました。是非楽しんできてください。まおう」



全員が首を捻りながら考え、旗艦に旗を設置してその旗を全員で肉体のみで泳いでいってぶっ壊して旗を取ってくる……遊び?


(それは、ただ襲ってこいって言ってんのと何が違うん?)


ギジェルも顔は邪悪ににやけながらも、皆の者ぉぉぉ! ビーチフラッグとやらを楽しもうぞ!!(ヤケクソ



「ギジェルさん! 準備体操して、スタート準備出来ました。 速く合図の笛吹いて下さいよ!!」と部下が急に機敏に準備体操して水で体を慣らし、男女問わず水着になって海に足を向けて寝そべり一斉にギジェルの方をみて合図はよと怒鳴る。



ギジェルも応っ!!と急にやる気をだし、ホイッスルっぽい笛を力一杯吹いた。


勢いよく飛び出していく、軍閥の皆さん。他にも、荷物持ちのクラーケンやらなんやらのモンスター達も水の上を走る勢いで海に消えていく。



軍閥の皆さんが消えた海で、ギジェルはやっとこのレクリエーションの意味を理解し。それならそうと言って下さいよ~もぅみたいなおっさんが体をくねくねさせ。キャンプファイヤーの封筒の方を見た。


「船の残骸やらなんやら旗以外の部下達が力を合わせて持ってきたものを用意してある丸太セットにくべて下さい。そして、炎を囲んでみんなで飲んで食べて歌って踊って楽しんでください」とな?


それはつまり、人間の帝国の船をぶっ壊すだけぶっ壊して。勝利の美酒をのみつつ、生きてる俺達が全員で生きてる人間や何かを炎の中にいれてその周りで輪になって歌って踊れって事ですか。そりゃ、戦争より楽しいじゃないですか。任せて下さいよ、そういうのは得意ですんでばっちり任せて下さいよ。(嬉しすぎて繰り返していくスタイル



自分が想像してたキャンプファイヤーってのは丸太の椅子に座って大人しく、肉でもやいて食べろって事かと思ってたんですが。戦争はしないけど、虐殺や襲うのはオッケーですかそうですか。


※魔王アリアのイメージは絵本のキャンプファイヤーとテレビのビーチフラッグですが、パパンや邪神達プレゼンツによりテレビ局も真っ青の改変が行われただの虐殺ショーと化しているオチ。



「バカンス、バカンスねぇw」


ちなみに、軍部からは次のバカンスはいつですか?と突き上げをくらい。魔王様の方が驚いたという。

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