第二十四話 カスタムゴーレムリクライニング

眼がしらを揉みながら、自身の肩をトントンとやりつついつもの様に書類を片付けるヒルダリアを筆頭とした官僚達は今日も書類をマッハで片付けながら忙しい日々を送っていた。



「あー、もう!」と今日も記入ミスを見つけて赤線でなおし、箱に投げ込んでいく。


この足元にある箱は、定期的に回収され。送り返され、なおされたものが戻ってくる仕組みだ。


「一回でやれとは言わないけど、記入漏れや字が汚くて判別できない書類多すぎよ」


と万年筆(ペン先が次に潰れるとめでたく六千本目になる)を使い今日もバリバリと仕事をこなしていた。


ちなみに、ヒルダリアはどんなに腱鞘炎になろうが過労でぶっ倒れようがアリアちゃんを保育園に連れて行ったり手作りお弁当を用意したりといった所は仕事以上に完璧にこなしており。「あのダメ夫は、少しは手伝えや」と世紀末覇者も真っ青のオーラを放っていた。


余談だが、保育園では。アリアちゃんよりも、ヒルダリアの方が殺気で満ち溢れている為挨拶する時の笑顔ですら恐怖を感じるものが一定数いる。


実は、ヒルダリアが軍閥の大将クラスと思っている国民も少なくない。


だがヒルダリアは「私は大臣官僚を束ねる一人、先代の時も。今代の時も」と言ってはばからない。


今代の魔王アリアちゃんで、宮廷スズメや貴族たちが一向に文句を言って来ないのは。

力ではアリアちゃん、頭脳ではヒルダリアに叶う訳がないと思っているからで。


それで、圧政されるかと思いきや。先日も、急に魔王様は部屋を用意しろと言い。


リクライニングなる、肩腰等のコリをほぐす椅子を大量に設置。


魔法陣により足を延ばす為の台が下から伸び、一度座れば眼の疲労までがすっきりと消え。背もたれを好きに倒す事が出来と言ったゴーレムの椅子を大量にその部屋に置き。


最期に、部屋の扉にひらがなで(きゅうけいしつ)と書いた木の札をぶら下げた。



「ははうえ、文官や大臣達に適度に休憩させて下さい」


※これである



仕事の鬼であるヒルダリアも思わず苦笑しながら、「まおうの命令じゃやるしかないわよね……」一班から順に十五分この休憩室で休みなさい。と命じて自分も最後に休むことにした。



ちなみに、余りの快適具合に一班が寝過ごしたため二班が一班を廊下に蹴りだし。二班も寝過ごしたため三班にけりだされと言った騒動が勃発。


ヒルダリアも、横たえたら日が傾いていて冷や汗をかいたという。



「どんだけ、快適な椅子をつくったのあの子は……」


流石のヒルダリアも翌日アリアに文句を言った所、疲れが抜けるまで起きられないとの説明を頂き。自身の肌の調子が良くなり疲労がすっかり抜けている事に気づくも、アリアに向かって。


「時間で起きれる様にタイマーにしてちょうだい」と真顔で迫り「ふぁい」との返事を貰う。


そして、アリアの頭を撫でながら。「強引な所は、あなたのお父さんそっくりね」と笑った。


「あと、アリアちゃん。ママ達だけじゃなく、軍部や使用人の皆にもなんかしてあげないと不公平に思う人がでるわよ」


それだけいうと、また仕事部屋に帰っていく。


その背中を、アリアはじっと見つめながら。


「何か考えねば……」とぼーっとしながら呟いた。

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