第二十話 ルージュの初恋
私は、第三中隊所属騎士 ムーランルージュ。仲間内では、ルージュと呼ばれている。
私が、黒騎士様を見かけたのはお気に入りのモップドーナツ城前店を通りかかった時だった……。
一目見た時、その禍々しい鎧。圧倒的強者の気配に、一目ぼれしてしまった。
※読者の為に説明すると、その黒騎士は魔王アリアの変身した姿
あの騎士姿というのは、主に魔王様がお子様である事に不満を持っていた層から絶大な人気を誇り。悪魔達なぞは、影で相変わらず「悪魔王様! 万歳!!」を唱和しているほど。幾ら実力主義で、見た目を気にしない魔族と言えどそういう事を気にする連中自体は一定数いる。
アリアも満更ではない為、偶に外に出かける時は黒騎士の姿をしている。
結果として、ルージュに限らず主に女性騎士達からも「あの素敵な殿方」呼ばわりされているというオチがつく。
曰く、先日などは「魔王様の直臣の黒騎士様がお前らを鍛えて下さる」と第六大隊のみ黒騎士一人と模擬戦をやる事になった訳だが。
※当然、中身は魔王様なので無茶苦茶強い。
何故、第六大隊なのかと言えば。ギジェルの直属だからである。
結果、黒騎士は偶に城に出入りしては城下でおやつを買ってくる訳だが。(お子様だと出入り禁止の所にも余裕で入れるためアリアも姿を愛用というオチまでついて)
その訓練の姿を木の陰から覗いていた、ルージュを始めとした女性騎士達等は大層羨ましがって陳情が嵐の様にあがってくる始末。
「かかってこい」(低音のイケボ)たった一言しか言わずとも、迫力はそこらの魔王等では話にならない。当然だ、中身はアリアちゃんなのだから。
その、一言ですら。今現在しごかれている大隊以外からはキャーキャーと声援が上がる。
それを、魔王様に頼んだギジェルでさえ、「これ程とはーー」と手に汗のまじった血を滴らせていた。
※お高いケーキセットを奢る事で手をうってもらった。
「戦闘方法もほぼ剣のみ、偶に拳や蹴りが出る程度。あれでは知っている俺でさえ、魔王様と一致せん」
(いつもの鼻提灯作って、耳ほじってやる気の無さげな魔王様が見た目を変えるだけで先代魔王がチンピラにしか見えんぞ……)
黒騎士様へというラブレターは連日届くが、場所は魔王の母親(大臣)の所なので「アリアちゃんはモテモテねー」と言いながら焼却されている。
当然その中に、ルージュのもあった。
その様子を偶々見た、女性兵士達が「横暴だー!」と叫んで暴動になりかけた事もあったが。その場に黒騎士(アリアちゃん)が現れ「すまぬな、俺は興味はない故。燃やしてもらっていた」と頭を下げる事で事なきを得た。
……筈なのだが、結局「手合わせして欲しい」という陳情に変わっただけで。しかも、手合わせならば我らもと男騎士達からも希望が殺到した。
「ははうえ、何故私の所には手合わせの希望は来ぬのに。黒騎士の所にはくるのだ」と涙目の魔王様が居た。
(そりゃ強すぎるアリアちゃんと、適度に自分達の目指すべき戦闘法の黒騎士じゃ参考になるかならないかの差よね)
と思いながらも多分判らないなと思ったので「ドチャクソカッコいいからよ」と自分の娘に言った所。「私はかっこよくないのか……」と落ち込んだので頭を撫でながら。
「貴女は可愛い、だからカッコいいではないわね」と言うとにっこりしながら。「判った、ありがとうははうえ」と言ってドアの向こうに消えていく。
「アリアちゃんには、そういうのはまだ早いわよね」とそれだけ言うと自分の席に戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます