第十九話 アリアちゃんの用事
まるで、宇宙人の様に両手をそれぞれ抱えられ。フルボッコで顔が原形をとどめていない元魔王。
「アリア様、おつれしました」
アリアの前にどさりと投げ捨てると、近衛は一礼して一歩下がる。
「いてて……、何の用だ」
「ちちうえ、学校では花火なるものを夏休みにちちおやと一緒にやったと自慢されました。私はとてもそれが羨ましかったので、私も花火がしたいと近衛に買ってきてもらいました」
空のバケツにお徳用花火セットが入っているのを見て、眼が点になる元魔王。
「それだけか?」「私にとっては一大事です、ちちうえ」
はぁ~~~~と長い長いため息をつくと、「魔王がこんな安っすい花火なんてやってどうすんだ!、やるならもっとド派手にやるぞ!!」ついてこいと、アリアと一緒に城の庭に出た。
「ちちうえ、派手とはなんですか?」「まぁ見てろ」そういって両手を真上にあげると「オラオラオラオラオラオラオラァァ!」次々に炎の魔弾が空へ昇って、次々に虹色に空が咲いた。
買ってきてもらったお徳用花火の事はすっかり頭から忘れ、ただ父親がうちあげる魔法の花火を眼をキラキラさせながら見ていた。城下も、その派手な花火に足を止める人が続出。魔力切れまで元魔王が連続で花火を空に咲かせ、本当に空が明るく照らされる程だった。
「はぁはぁ、これで満足か」「ちちうえ、すごい」
両膝に手を当てて、息を切らせている元魔王。
「いいか、アリア。お前は魔王、この国で一番なんだ。こんな庶民がやる様なショボい花火がしたい等と二度と言うんじゃない。どうせやるなら、この国で誰も真似できない程派手な花火を親子でやろうじゃないか」
「私は、派手でなくてもいいし。一番でなくとも良いですちちうえ」
そんな言葉がアリアの口から洩れたが、「俺に勝ったんだからそこは、一番にこだわってくれよ……」
そこに、天に向かって次々と打ち出される魔法を見たヒルダリアが何事かと走って来た。
「ははうえ」「アリアちゃーん、そこで何をしているの?」「ちちうえと花火をしておりました、ちちうえは大きな花火じゃなきゃいかんと言って私に、空にバンバンと魔法で美しい花火を見せてくれたのです」
その瞬間、ヒルダリアが元魔王をゴミを見る様な眼で見た。
「なんだよ、ヒルダリア」「いい所あるじゃないの」「うるせぇよ」
そういう事ならと、ヒルダリアも空に向かって七色の花を次々と咲かせ。
「アリアちゃん、ママも今日は派手なのがいいかな♪」とアリアにウィンクし。
親子三人で花火をやるには余りにド派手で、城下の何処からでも見える程の大輪の花がその夜城の真上に咲いた。
尚、翌日アリアは友達に自慢しまくろうとしたのだが。余りにもどでかい花火だった為、親子三人で仲良く夕涼みした程度に思われてしまった。
「ちちうえ、やっぱり花火は安物の方がよいのではないか?」アリアはそう思わずにはいられなかった。
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