第十八話 魔王様のとーちゃん
「決勝の相手が、俺の娘とは……」ウルヴァリオが鍛え抜かれた拳をつきだした。
「母上は怒って居たぞ、父上は仕事を増やし過ぎだと」アリアは構えずに立っている。
そう、ここはかつての魔王国魔王決定戦。
予選さえ通過できれば、平民だろうが奴隷だろうがゼロ歳児だろうがこのトーナメントに参加する事は出来る。
五年に一度魔王を決める、最強決定戦の決勝。
「くっくっくっ……、魔国では強さこそが法よ! 娘よ、俺を倒せ!!」
(オーバーロード:神格化)
「邪神さえ殺し、覇道を進むが魔王よ!」
「貴方を倒せばよいのだな、ちちうえ」
(獄帝:七星天塔(ごくてい:ななほしてんとう)
背後に、巨大な塔の幻が現れ。それぞれが邪神の王のレリーフが彫られている。
神と同レベルになった、ウルヴァリオは娘だった何かを見た。
全ての、塔の邪神の王がアリアにただ首を垂れ膝をついて命令を待っているではないか。
「自分の娘ながら、本当に五歳かよ……」
ただの邪神と同格の自分と、邪神の王が七柱もその力に首を垂れている娘とでは文字通り桁が違いすぎる。
「殺しはせぬ、それでは母上が悲しむ」
「アリアちゃーん、その丸でダメ夫をピーしてピーピーしてピーしちゃいなさい!」
※放送禁止用語を観客席で連発。悲しむどころか三日三晩祝杯をあげそうな母。
「畜生、あの時の事を思い出す。娘の天塔で、何とか最初は凌いだんだが」憤怒……、ありゃダメだろ。
※よっぱらいの自分にとって都合のいい記憶で真実とは異なります。
ギジェルも、自分も鍛える事を忘れた訳じゃない。
魔力と、ステータスのレバレッジ。魔力一で、最大四百倍までステータスが伸びる。
自分を倒しに来た今代の勇者すら、娘の姿を見る事無く消されたのをこの目で見た。
(俺も父親か、結局娘が可愛いのは確か)
そして、その使う魔力を強欲で外部から引っ張る。つまり、強欲で回収した魔力がそのまま索敵&射程に早変わりとかどう攻略すりゃいいんだよ。
あれが、あかの他人なら死んでも食い下がるのが魔王ってもんだが。
「実の娘が、しかも出場理由が母親の働き過ぎの心配してだもんなぁ……」
酒場で飲んだくれながら、元魔王は酒臭い息を吐きながら煙草を吹かす。
「俺と勇者は実力拮抗してたんだよ、あいつは来る度強くなってボロボロになって。それでも眼だけは死んでなくてよ、それがどうしようも楽しかったんだよな」
からりと、酒の氷がコップの中で鳴った。
「まぁ、娘が生きてるうちは魔王は代替わりなんてねぇだろ」
ガン!!と酒場のドアが蹴破られる音がして、ウルヴァリオがそっちをむくと、般若の顔をしたヒルダリアが居た。
「アーナータァァァァァ、昼間から酒場何ぞ入り浸って良い身分だなゴラァ!!」
「あっやべ」
逃げ出そうとするが、店の奥は既にブートキャンプで鍛え抜かれた近衛が道を塞いでいた。
「この短期間で、一人一人が俺並ってどんな鍛え方したらそうなるんだよぉぉぉぉぉ!」
「「「「いぇ~い、逃がしませんよぉ元魔王様ぁ?」」」」
男女関わらず、一人一人がイヤに体中がオイルの様にテカテカして筋肉で足が巨木の丸太みたいになっている近衛達が居た。
「「「「みっちり、約四か月間。俺達私達は地獄に居たのだ! 酒浸りのオッサンに負けるわけないだろうが!!」」」」
「だがっ、ここでつかまる訳にはいかんのだ!」
シュタっと影になってウルヴァリオが逃げようとするが、ヒルダリアの髪の毛が影や出口に無数に伸びて突き刺さって塞ぐ。
「ならばこっちだ!」
近衛の方にUターンして、裏口から逃げようとするが。
筋肉でバキバキとは思えないほど機敏に足を引っかけて、元魔王を転倒させる事に成功する。影になっているのに、影に足を突き刺してだ。
「ぬぉっ!」そのままつんのめって床に顔から落ちる元魔王。
「おっそ~い☆彡 本当にこれが少し前まで魔王だったの? ただの飲んだくれのオジサンじゃん」
近衛の何人かが見下した様に、転んだ元魔王様の頭を踏み付けた。
「元魔王様、アリア様がお呼びです」
そうやって首根っこをつかまえると、ずるずると魔王城に引きづっていく。
そして、ヒルダリアとすれ違いざま「申し訳ございません奥様、そういう訳ですのでこれはお借りしていきます」と一礼する近衛達。
ヒルダリアは肩を竦めてふぅとやると、しかたないわねとだけいって帰っていった。
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補足:七星天塔(ななほしてんとう)は怠惰、憤怒、強欲とそれぞれ塔に対応した能力を使うアリアちゃんの必殺技です。(同時起動可能)
強欲は、射程に入った対象全てから望んだものを拒否無しで強奪する能力。情報、魂、寿命や魔力なんかも対応しています。
憤怒は、魔力MP1に対して全ステータスや射程等を四百倍する能力。
これからも判る通り、自分以外の魔力やレベル何かを強奪してそのまま強くなっていく技なのでそれらを同時起動させながら怠惰で魔力の最大容量=強度。それらとは別に、魔力の物質化や支配を行うので近距離戦以外での勝ち目は殆どありません。
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