第十二話 黒葬ブートキャンプ

「オラ! 貴様らそれでも姫の近衛かっ!!」


ケツに飛び蹴りをいれ、どっかのヒーローみたいにド派手に飛んでケツに足が当たった状態で地面をこすりつける様に滑っていく。



「てめぇもだ、ラグナシア。こんな、モヤシでは姫の近衛がとまるかっ!!」

「何で私までこの様なっ!」「姫に鍛えてくれって言われたからに決まってんだろ、バチクソ本物に仕上げてやるからな!」



ちなみに、朝三時に叩き起こされ準備運動と称して四十キロ程全力ダッシュで走破し。

黒い地獄の炎で火あぶりにされながら鉄棒にぶら下げられて足にくくりつけられたバケツに両手のコップで水をいれバケツの内側に書かれた線に達するまで無制限に腹筋オンラインされられていた。ちなみに、普通の炎と違って地獄の黒い炎の温度はクッソ高い為バケツの水なぞあっという間に蒸発する。


よって、蒸発するより速く湯呑の様な両手の入れ物で水を入れないと終わらないのだ。


ちなみに、この後は直線で五百メートルを冒頭のように追いかけまわされながらスタートとゴールでそれぞれ腹筋と背筋二千回やってそれを四往復みたいなのをワンセットと数えて規定タイムに全員が到達するまで。それ、どこのガイジが考えたトレーニングメニューだよみたいなメニューをこなした後に全員で(ラグナシア含む)この黒葬から一本取るまで休みなしという地獄過ぎるメニューをこなすラクセイ達。



「だがしかし、我らのウエストは確実に減っております」女性達の眼には希望の光が宿っているが、隊長のラクセイは顔面ハニワにしながら。


(ヤバスギィィィィィィィィ!!)


きっと、空も飛べるはずと光になる日は近い。



恐ろしい程の筋トレとバトルトレーニングで、近衛だけ異様に強くなりその修行のすさまじさを見た関係者は口々に「五年後の魔王決定戦ではあいつらのなかから魔王が生まれるかもしれん……」等と噂が広まっていた。




それ位、どこのチート勇者だよと言わんばかりに彼ら彼女らは強く強く強くなっていく訳だが。ドブラックも真っ青な程しごかれ続けているだけなので。


これで痩せもせず、筋肉もつかず、強くもなれなかったらそっちの方が問題だわと全員が殺気を込めてそう思っていた。


ちなみに、黒葬との模擬戦は黒葬のエメラルドグリーンのスカーフに何らかのダメージを与えればいい事になっている。



初日なんか、近衛全員で同時に蹴りをいれタイミングぴったりで放射状に足の裏が合わさった映画の様な展開になった時には空気摩擦で炎が見えた位だったのだが。


「温い!」と僅かに足を曲げて飛んだだけで交わされて、アルカン・ラナをかけられてラクセイが最初に沈んだのは記憶に新しい。


「なんで、あんな隙だらけのド派手なな技でこの俺がっ!」

「姫が、なんか派手な技やってくれとご希望だったからだが?」


横で、眼をきらきらさせながらにっこにこのアリア様。

この様な台詞で、更にヒートアップする近衛全員。


やけにメカメカしい肉体の筋繊維の一本一本からヤベェぐらいの魔力を噴き出し、黒いブーツとグローブを身に着けている黒葬。


「ちなみに、ふがいない奴は体の何処かにチャーシューの様な紐で縛りながら尊厳を失うようにしろとお達しを受けてるが?」


その瞬間全身の血管が浮き上がり、雄たけびを上げる一同。負けられぬ戦いが、そこにある。そして、それは毎日なのだ。



重ねて言おう、「弱ければ何も守れはしない」それが魔国の残酷な掟なのだから。


守るものが尊厳やプライドだったとしても、守れはしないのだ。


だって、しごいてるのは悪魔なのだから。

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