第七話 黒龍の咆哮(ロア)
我の名は、カイザーブラックドラゴンのゲザリギュネイ。
魔王様からは、ゲザリと呼ばれておる。
そう、かつて魔王様は我らを従える時にこうおっしゃったそうだ。
「おうまさんが欲しい」それから国中からスレイプニルやペガサス等果ては馬人族達まで集められてテストしたらしい。
だが、魔王様は可愛らしい姿こそしているが魔界最強のお方。
当然の様に、馬ごときでは脅え。スレイプニルはただ足を畳み、馬人族は色んな水を垂れ流しながら「おゆるしを」しか言わぬ機械になってしもたらしい。
ムリも無い、我らドラゴン一族でさえ。魔王様を乗せる事が出来る程のドラゴンは我しかおらぬと聞いた時この耳を疑った程だ。
「どこの世界に、龍帝(カイザードラゴン)種をうま代わりに使うものがいるというのだ。同じ王なら、我ら龍に勝る存在など神位だというのに」
ただ、まぁ我とて納得はしているのだ。龍とて魔族同様強きに従う一族、一騎打ちで破られたなら忠義の一つでも持とうというものだ。
我の前で、布団を敷いて「お昼寝の時間だから」といって戦闘中に大口をあけて大いびきをかいて眠り始めた時は正直「舐めてんのか、ぶっ殺す」と本気で殺意も沸いたものだ。
我のブレスは、掛布団に弾かれて明後日の方に飛んでいき山がくりぬかれた様に消し飛んだ。爪も牙もまおーとひらがなで書かれた掛布団に一ミリも傷をつける事叶わず、メイドに聞けばあの掛布団は魔王様が赤子の頃母親に余りの膨大過ぎる魔力に脅えられ魔力を殺す勢いで吸い取る変わりに強度を上げる布団をプレゼントされ。
気持ちよく寝れるからという理由で、愛用し続けた結果魔王様の魔力を吸いにすって未だあの布団に入った魔王に傷をつけたものがおらぬ程の強度を得たというのだ。
なんじゃ、そのふざけた布団は。
その後、三時に体を起こして。おやつをワシの攻撃という攻撃を、ノーガードで浴びながらゆったりと召し上がりその後にオレンジジュースを二杯召し上がったあたりで我は負けを認めたのだ。
今でも忘れん……、まるで世界がゆがむ程の魔力で翼の根元を握り潰し。あらゆる筋肉を動かせない様にしたうえでそっと耳元で言ったのだ。
「私のおうまさんゲット」と
ふんっ、それ程の強者の騎龍になれというのならなってやるわい。
龍の背に乗れるのは、忠義を誓った主のみ。
帝王の背中に乗るのなら、強さを示してもらわねばのぅ。
「しかし、ワシは補助輪付きの自転車の変わりか?」
基本近場しかいかず、偶に戦場に「遊びに行く」程度だからな。
「ワシも遊んでよいか?」と尋ねた時は、「味方を傷つけなければ」と答えられ久々に大暴れする事が出来た。あれは、楽しゅうございましたぞ。人間共の慌てふためく姿が、まるで巣に水を大量に入れられた蟻の様でのぅ。
その後、城のメイド共にワシと魔王様は叱られたのだったな。
「魔王様や龍には遊びでも、軍人たちが心が折れるからやめなさいと」
けちじゃのぅ……、というか我が主は戦場以外には買い食いと公園位しか外にでないのだが。
先日は、センベイ屋に寄って出来損ない詰め合わせを大量に買い込んでワシも一袋頂いた訳だが龍の食事は嗜好品でほぼ主の魔力で賄われる。
のだが……、我らが取り過ぎて主を干からびさせない様に工夫する事はあっても垂れ流している魔力だけで我が風船の様に割れるかと思ったのは幾星霜ぶり。
戦場が遊び場というのも納得がいく、腕を振り回しているだけで十万の敵がまるで砂ぼこりの様に消し飛んでへし折れるのだから。その中には悪魔もドラゴンも含まれる、あれは魔族に生まれた邪神か何かか?
その割には、しょっちゅう城の連中には叱られて正座させられておる。
「全く……、どうなっとんじゃ」
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