第六話 拳帝の悪魔
「お初お目にかかります、ラクセイ様」
眼の前で、優雅におじぎをしている。この悪魔こそ、魔王様が耳糞をほじりながら適当に召喚した拳帝の悪魔名をラグナシアという。
「私に性別はありません、故に男性の相手の時は男性の姿を女性の相手の時は女性の姿で魔王様の命令に従い訓練の相手をさせて頂きます」
ラクセイは、息吹を吐き出しながら左手を握りしめ引き手に構えた。
一方、ラグナシアは両手とも軽く肘を開いてハの字で構えただけ。
「せぃぃぃぃぃぃぃぃ!」ラクセイの右がラグナシナの顔に届く直前、ラクセイの腕が伸びきったそこにラグナシアの右肘と右膝で挟まれる。
その反応速度に、眼を見開くラクセイ。
「折る気なら折れましたよ、魔王様から言われているのでやりませんが」
「だろうな……、流石悪魔と言ったところか」
それからも、くり出す蹴りと拳をことごとくラグナシアはその肘と膝を殴って軌道を変えて逸らすという芸当を繰り返す。
「我が主人は、適当に耳ほじりながら面倒そうに召喚した悪魔がこのレベルとは……。恐ろしいお方だな」
伊達に、歴代魔王最強と呼ばれている訳ではない。
「私も、あんな乱暴な呼ばれ方したのは初めてですよ。召喚陣に魔力で創った手をつっこんで悪魔のスピリチュアル世界から私の心臓を鷲掴みしてこっちの世界に引きずりだしてその魔力で創った手を切断して、私の肉体を創り上げて受肉させ。細胞の一片レベルでの支配を可能とするそれを力技で強制して契約まで組み上げてしまうんですから」
※鼻提灯作って途中から寝ぼけながらもコントロールだけは一流の魔王様
今までさんざん化け物化け物って言われてきましたけどね、あのお子様程じゃないですよ。なんですかあれ? ありえないですよ。
既にラクセイは強くなり過ぎていて、多少力をいれて拳を振るうだけで龍王程度のブレスなら相殺する事ができる。その拳や蹴りをいとも簡単に捌いているこの悪魔との訓練は黒龍等とは比べ物にならない程痩せる事が出来た。
「何故私が訓練で呼ばれるんです?あれだけの力があるなら自分でやった方が早いでしょう」
「訓練は我らが願ったのだ、最近太ってしまってな」
思わず、微妙な顔になるラグナシア。
「手を具現化出来るなら、戦場でもトレーニングジムでも具現化出来るでしょうよ」
うーむと一瞬ラクセイは腕を組んで考え込むが直ぐに真面目腐った顔で言い放つ。
「面倒なんだろう、魔王様は基本的に怠惰だ。無駄に行動力がある時は大抵面白いからだ、そなたを理を無視して受肉させたのも自分でやりたくないからであろう」
それを聞いて、ますます変な顔になるラグナシア。
「そんなのが魔王でいいのか、お前ら」
「愚門だ、この魔国では強さこそが絶対的な基準。最強の存在が魔王となり、魔王以外の魔族に貴賤など存在せん。よって、我々近衛は魔王様が死ねと言ったら死ぬだろうよ」
(何……、こいつらの忠誠心)
「重ねて言うがそれでいいのか?」
「少なくとも、俺個人の感情で言えば今の魔王様は楽でいい。こうして、鍛えたいと言えば仕事が無ければ好きなだけ鍛えていてもいいからな」
仮に仕事というのも、何処かに運んだり。おやつを買って来たりで、命をかけた諜報等は絶対やらせないしな。以前の大した力も持たぬゴミ魔王の割に運よく魔王になっただけで威張り散らしてやりたい放題している連中よりはずっといい。
しみじみと、いうとラクセイは今一度悪魔の前で構えをとった。
「今の魔王様に近衛や諜報等必要ないと、我らが一番よく知っている。だからこそ、鍛え続けて少しでもお傍に長く仕えたいのさ」
その真剣な鋭い眼光をみて、口元だけで笑うラグナシア。
「あの、クソ怠惰魔王にはもったいない忠臣じゃねぇか」
その後も、みっちり組手を繰り返し日々修行を繰り広げていった。
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