第五話 腹心ラクセイ
俺の名は、落星(ラクセイ)。
魔王様直下の近衛にして、魔王様の腹心の一人だ。
かつて、先代魔王の四天王として。又、今代魔王アリア様の御庭番の長として。
我が従うのは魔国にあらず、魔王様個人である。
「ラクセイはおるか」そう呼ばれれば、二十四時間三百六十五日いつでも命ある限りかけつける。
先代魔王の時は、勇者と死闘を繰り広げ。また、戦争の時は暗殺。官僚や貴族共の不正や不忠者の粛清などやる事は多岐にわたる。
ちなみに、今代魔王様であられるアリア様からは。
「ラクセイ、私のお小遣いで買える中で安くて美味しいケーキのお店を知りたい」
との命令を頂き、部下の女アサシンであるテリーヌと共に王都城下のケーキ屋を片っ端から調べるために「この棚の上の左から右まで一列の商品を一個ずつ頼む」と注文しガタイの良い男だけでくると悪目立ちするからという理由でテリーヌにも半分受け持ってもらう。
無論、他のケーキ屋には部下を二人一組で行かせ。金も持たせて、少々量が多いかもしれんが仕事だと開き直ってそれを食す。
「ラクセイ様、このケーキは甘すぎます」と無表情のテリーヌがぼやく「そうだな、このケーキ屋はボツだ」とこと細かに採点。魔王様の条件に適うケーキを探し、報告を上げ喜ばれる度に忠義を尽くしたと感じる。
ただ、最近は菓子の諜報が増えたせいか部下ともども二の腕や腹がつまめるようになってきた。「ラクセイ様、訓練を増やしましょう」
部下にそう言われ、確かにそうだなと想い。仕事の無い時の訓練量を、十倍増やした。
だが、相変わらずウマい店を探してこいという命令が多く。
我ら、近衛は男女問わず動けるデブしか居なくなってしまった。
先代魔王様の時よりも、レベルは上がり。力も倍増、ステータスも二十以上増え。並のドラゴンなら素手で相手出来る程度に全員がなっている。というか、最近の訓練相手はほぼ黒龍達だからな。
だが、ウエストもそろそろ部隊全員自分も含めて九十に届こうかという塩梅。
特に、女性近衛の眼に最近殺気が常時こもり始めている。
「ラクセイ様、訓練を増やしましょう」真顔で、有無を言わさず進言してくる。
「既に、許された時間は訓練に当てている。これよりは質を上げるしかない、すなわち強者と戦う事。だが、我らは既に黒龍と訓練しているのだ。これ以上の相手となると、悪魔か邪神か神獣の類ぞ」
「魔王様に、訓練用の悪魔を召喚して頂きましょう」
いや、既に部下の顔が悪鬼羅刹なんやが。
「進言はするが、期待はするな。今代の魔王様は、まだ幼い故」
「そうですね、ではきちんと進言だけはして頂きましょう」
ラクセイはテリーヌに事あるごとに、こうして突き上げられていた。
今日もこうした会話をしながら、部下と一緒にスイーツを探す仕事をしている。
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