第6話


 俺達は各々料理を盛り付け食べ始める。席は親同士、子供同士に別れていて俺達は四人で料理を囲んで会話に華を咲かせていた。


「紗奈ちゃん部活何か入ったの?」

「んー今のところ何も決めてないかな。」

「じゃあいっそのことお兄ちゃんと同じ弓道部入りなよ!絶対似合うよ」

「んー、弓道はちょっと腕の力が無さすぎて」


 紗奈が弓道か…絶対今よりも人気が出る。弓道女子として咲花さんと美少女弓道コンビと色々なところで話題になりそうだ。そんなことを考えていると美紗都さんが俺に話しかけてきた。


 「透也くん。これはできたかいこれは」


そういい既に出来上がりかけている美紗都さんは小指を立てて聞いてきた。美紗都さんはお酒が入るといつもの優しい口調からおせっかいおばさん見たいな口調になる。


 「安心してください。前も今も出来たことありませんよ」

 「え〜、透也くんモテるでしょ。弓道してて筋肉あるし。私のハート撃ち抜いて〜って」

「何言ってるんですか。透さんもなんとか言ってくださいよ」


  微笑ましそうに俺たちのやり取りを眺めている透さんを見る。


 「はっはっは。でも僕も美紗都の言ってることは理解できる。透也くん中三の頃からまた身長伸びただろ。佇まいが男らしくなったよ。きっとこれから言い寄られることが多くなるよ」

「そうなんですかね…」


 そんなこと言われてもピンとこない。俺は小中とモテたことがない。言い寄られたり告白されたこともない。


 透也はその理由が紗奈にあることなんて知る訳もなかった…


 

 そんなに俺って魅力がないのだろうか。唯一仲の良かった紗奈とも話さなくなり女子との接点が妹達と母親だけになってしまった。隣に座っていた茉里に「俺って魅力ない?」と何気なく聞いてみた。


「お兄ちゃんはかっこいいよ!私や詩乃にも優しいし、お兄ちゃんに抱きつかれるとすごい安心するんだ」

「おいこら、何変なこと言ってんだ」

「え?一緒に寝てる時お兄ちゃんたまに私に抱きついてくるよ。ね、詩乃」

「うん。兄さんの腕のなかあったくて安心する」

「詩乃?!」


 詩乃が頬を赤くしながらそんなことを言った。俺って茉里と詩乃にそんなことしてるの。てか茉里が俺のベッドの中に進入してくるのはしょっちゅうだが詩乃は知らない。いつの間に入ってきてるんだ。詩乃のことだから俺が起きる前にベッドから出てるんだろう。だから今まで気付かなかったんだと思う。それを聞いていた美紗都さんが「透也くんには既に可愛い娘がいたか。じゃあ私はあなた♪」と透さんに抱きついていた。俺は苦笑いをし紗奈達の方を見ると三人で何やら話している。紗奈に至っては何故か目がマジになっている。何を話しているのか分からないが三人とも楽しそうに話しているからいいかと俺は食事を再開する。


 しばらくすると母さんから声をかけられる。


 「透也、2階からアルバム持ってきて。もちろん卒業アルバムもね」

「見るの?」

「当たり前でしょ。それ以外に何があるのよ」


 ここで見るのか。変なことは言わないでほしいなと思い立ち上がると紗奈が「私も手伝うよ」と言ってくれた。なので俺は紗奈と一緒に二階に上がっていく。大体のアルバムは俺の部屋にあるので俺は紗奈と部屋に行く。


「透也の部屋久しぶりに入ったよ」

「確かにな。それにこうやって家に来たり話すのも久々だしな」

「それは…そうだね」


 俺と紗奈は棚からアルバムを取り出し少し広げる。懐かしいな。俺達はしばらく二人でアルバムを眺めていたが俺は尿意を催したので


「ちょっとトイレ行ってくる」


 と言い部屋を出てトイレへ向かった。


 部屋には紗奈が一人取り残される。彼女の理性は既に限界に達していた。


 少しトイレが長引いてしまった。ごめん遅くなったと言い俺はドアを開けたが目の前の公開に唖然として固まってしまった。目の前では紗奈が俺の布団にしがみつきながらスカートを捲し上げ自分を慰めていた。紗奈もびっくりした様子で顔からは焦りと動揺が滲み出ていたが、すぐに見られちゃったとでも言うような表情をする。


「さ…な?」

「…」


 紗奈は無言で立ち上がり俺の方へと歩み寄ってくる。紗奈の目からハイライトが消えていて怖い。ちょ、紗奈さん?俺は入口のドアに追いやられる。やばい。本能がそう警告を鳴らしていた。逃げれない。誰か助けて…と心の中で叫ぶ。すると      

         コンコン 

後ろのドアからノックが聞こえてきた。


「兄さん、紗奈ねえ大丈夫?お母さんが早くしてだって」


 と詩乃が声をかけてきた。ナイスタイミング詩乃!紗奈もこの状況を見られるのは不味いと思ったのか俺から離れる。俺は扉を開けた。


「ちょうど戻ろうと思っていたんだ」俺は一刻もこの場から離れたくてアルバムを抱き抱え紗奈と詩乃をその場に残し一階へ降りて行く。


 残された二人は互いを見つめ合う。


 彼女は悔しがる。「逃した」と。

 彼女は胸を撫で下ろす。「間に合った」と。


 彼女達の間には見えない火花が散っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女は取られたくない エリートぱんつ @Ereatpant

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ