第5話
第5話
俺は特進科の教室がある棟へと来た。この学校は普通科と特進科で棟が別れている。始めてくるので知らない生徒ばかりだ。しばらく歩いていると1—8というクラス標識が見えた。俺は後ろの入口からこっそりとクラスの中を見渡す。残っている生徒の中に紗奈の姿はなかった。一応俺は教室から出ようとしていた女子生徒に声をかけて聞いてみた。
「紗奈ちゃん?紗奈ちゃんなら今日は用事があるって言ってもう帰ったよ」
「もう帰っちゃったか」
「なになに?告白でもするつもりだった?」
「あ、いやそんなんじゃ…」
「紗奈ちゃんモテモテだよ〜。何回も告白されてるし」
入学してからまだ一週間しか経っていないのに相変わらずの人気だな。俺は「ありがとう」とお礼をし、紗奈に一応連絡を入れておく。
「今どこいる?もう帰った?」
俺は連絡を入れ、玄関へといく。靴を履き替えて学校から出て校門へ行くと、紗奈が校門の前に立っていた。もしかして俺を待ってくれているのか?しかし紗奈の前には先輩らしき人達がいる。多分紗奈は絡まれている。紗奈は無言で無視しているが鬱陶しそうだ。紗奈に声をかけるために近づくと紗奈も俺に気付いた様子で少し安心した表情をする。俺待ちで間違いないな。するとしつこく話しかけていた先輩が
「ちょっと無視しすぎてしょ〜!」
と紗奈の腕に掴もうとした。俺は咄嗟に紗奈を抱き抱える形で引き寄せる。
「すみません。先約があるもんで。それじゃ」
俺はそのまま「行こう」と紗奈の手を引き歩き始める。周りのギャラリーからの視線がすごい。紗奈さんが男と一緒に歩いてる、誰だあの男は?!
はなから見たら俺が紗奈を引っ張っているように見えるが誰一人としてその様なことは思わなかった。なぜなら透也に手を引かれている紗奈の表情がとてもうれしそうだったからだ。
しばらく歩いて俺は紗奈の手を掴んでいるのに気付き手を離す。
「ごめん紗奈!手痛くないか?」
「大丈夫…それよりさっきはありがとう」
「いいって。紗奈も大変だな」
「私可愛いからね」
「自分で言うのかよ」
そんなことを言いお互いくすくすと笑う。あぁ、こんなふうに話すのなんていつぶりだろう、懐かしいな。
「
紗奈がそう言い歩き出す。俺も後を追い歩き出す。
紗奈は舌を噛んで耐える。自分の体の疼きと少しでも油断すると緩んでしまう表情を堪えるために…
紗奈と買い物を済ませ俺達は家へ向かう。
帰り道も紗奈は周りから目を引いていた。そんなことお構いなしという様子で口笛を吹いて歩いている。そんなこんなで我が家についた。
「ただいまー」
「お邪魔します」
と玄関を開け入ると茉里が駆け寄って紗奈に抱きついた。
「紗奈ちゃん久しぶり!!!」
「茉里ちゃん!少し見ないうちに可愛くなったねぇ」
「えへへ//ありがとう!紗奈ちゃん入って入って!!」
茉里は紗奈の手を引いてリビングへ入っていく。俺も後に続いていく。
リビングではご飯の準備をしている母さんと紗奈のお母さんの美紗都さんの姿があった。
「二人ともおかえり。紗奈ちゃん買い物ありがとね」
「いいんですよ。今日の料理楽しみです♪」
「あら、そう言われたら腕が鳴っちゃうわ」
母さんは紗奈の家にちょくちょく行っている。その時紗奈にも会っているため母さんと紗奈は久しぶりというわけではない。
「透也くん今日はお邪魔するわね。」
「いえ。ところで父さんと
「二人ならお酒を買いに行ったわ。透也くん達の年齢じゃまだ買えないからね」
「確かにそうですね」
ちなみに俺も美紗都さんとは朝登校の時に会う。父さんと透さんに関しては多分美紗都さんと母さんが買いに行かせたんだと思う。二人はお酒が大好きだから。
母さんから手伝いを頼まれたので準備をしようとする。
「あれ、紗奈は?あと詩乃も」
「紗奈ちゃんはトイレ行ったよ。詩乃は2階でなんかしてる。私呼んでくるね」
そう言い茉里は詩乃を呼びに行く。リビングには俺一人…俺は黙々と準備をした。
だいたい準備ができた頃に父さんと透さんがパンパンの袋を抱えて帰ってきた。まあ大量に買ってきたことやら。ちょうど紗奈もトイレから戻ってきた。少し息が上がってる?降りてきた詩乃も同じことを思ったらしい。
「紗奈ねえさん大丈夫?」
「大丈夫だよ、ほらはじめよう」
みんなリビングに集合してそれぞれの飲み物を手に持つ。乾杯の音頭は美紗都さんがとる。
「えーコホン。本日はお集まりいただきましてありがとうこざいます。紗奈と透也くんの高校入学、そして茉里ちゃんと詩乃ちゃんの進級を祝しまして乾杯!!!」
「「「乾杯!!!!」」」
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