第4話

    ♪〜   ♪〜   ♪〜

 目覚ましの音で透也は目覚める。目覚まし音を止めるため右腕を伸ばそうとするが、誰かにガッチリ掴まれて自由が効かない。透也は自分の右腕を見てまたか、とため息をしその人物が起きない様に、絡まっている腕をとき、ベッドから出て一階へ降りていく。


 朝のニュースでは桜の咲き具合を報じている。そういえば観桜会来週からだな、とテレビをぼーっと見ながら朝食を取っていると、


「お兄ちゃん!なんで一緒に起こしてくれなかったの!?」

茉里まりがあまりにも気持ちよさそうに寝てたからな。おにいちゃんの優しさだよ」

「そんなところでやさしくするな!!」


 妹の茉里が頬を膨らませながら2階から降りてきて俺の隣に腰を下ろす。腰近くまである金髪の長い髪の毛を下し俺のアニメのシャツを上に着ているだけで下はパンツ以外何も履いていない。世間一般的に見ると、茉里はギャルだ。ギャルと言っても見た目だけで中身はごく一般的な女の子であり、夜遊びなんかはもちろんしていない。ニュースで流れてきた俳優の不倫騒動に茉里が騒いでいるともう一人2階から降りてきた。


「茉里ねえ朝からうるさい」

詩乃しの〜!!あとで髪巻くの手伝って〜」

「わかったから早く顔洗ってきなよ」

「かしこまりー」


 詩乃は俺のもう一人の妹で茉里と詩乃は二卵性双生児の双子だ。二卵性双生児なため、外見や性格は似ておらず茉里がギャルなら詩乃は清楚と真反対だ。性格は茉里は母親と、詩乃は俺と父親似だ。


「兄さんおはよう」

「おはよ詩乃。よく寝れたか?」


 と詩乃が先程茉里がいた所に来たので、俺が詩乃の頭を軽く撫でてやると詩乃は顔をフニャッとさせ、嬉しそうにしている。詩乃は猫みたいな可愛さがあるな、と撫でていると顔を洗い終わった茉里がやってきて「あ!詩乃ばっかずるい!私も」と頭をグイグイ押し付けてくる。分かった分かったと俺は茉里の頭を撫でると茉里も満足そうな表情をした。


「茉里は朝俺のベットで寝てたろ」

「え、茉里ねえそうなの?」


 詩乃が目をギラつかせながら茉里を睨む。茉里はいいでしょーとニヤニヤしながら詩乃を見る。分かる通り二人はブラコンだ。なんでこんなにブラコンなんだ。まあ扱いやすくて助かるのもまた事実ではある。ひとまず二人を引き剥がし朝食を食べ始めたところで母が話しかけてくる。


「今日の夕飯は透也と紗奈ちゃんの入学祝いも兼ねて、うちに紗奈ちゃん家来るからね」

「え!紗奈ちゃんくるの?やった!」


 茉里がはしゃいでいる。紗奈が家にくるのなんていつぶりだろう。


「父さんは?」

「お父さんも早めに仕事切り上げて帰ってくるって。」


 学校でも顔を合わせていないので本当に久しぶりだ。積もる話もそうだが、この機会に中学生の時のことを聞くのもいい機会かもしれないな。そう思い俺は朝食を片付け支度をし家を出た。


 


 テレビでは今日の星座占いが流れている。

「今日の占いです。獅子座のあなたは知人の意外な一面を知ってしまうでしょう。それが吉と出るか凶と出るかはあなた次第です。」




 あれから恭介と合流し学校へ向かう。入学式から一週間が経ったが特にこれといった事はない。ようやく桜も咲き始め、登校道は桜の花びらで彩られていた。。商店街には来週の観桜会の旗やチラシが目に入る。今年は誰と行こうかなんて考えていると隣を歩いている恭介が口を開いた。


 「再来週あたりに観桜会いこうぜ」

 「いいよ。でも恭介から誘われるとは、女子とは行かなくていいのか?去年も女子と行ってたろ?」

 「もちろんいくけどよ、女とばっかってのも飽きるしよ。」

 「そうゆうもんなのか」


 それからしばらく歩き、話の話題は部活のことになった。


 「高校こっちの弓道部はどんな感じよ?」

 「中学よりは緩いけど俺はこっちの方が性に合ってて好きだな。先輩達も優しいし」

 「ふーん。あ、弓道部といえば湊さんも弓道部なんだろ」


 入部届を出しに弓道場を訪れると、湊さんの姿があった。俺は彼女の会を見て彼女の既視感の正体に気づいた。彼女は中学の県大会で団体の優勝をしていた。彼女は持ち前の美貌で周囲から注目されていたが、その彼女が大会中一本も外さず、芯がしっかりとしている射法に会場の人々は息を呑んでいた。彼女の射法はどれも絵に描いた様な綺麗さだった。


 恭介と話していると学校に着いた。透也は今日の放課後の事を思いながら一限の授業の準備に間に合う様に準備を始めた。





「んあぁ、おわったー」


 今日の授業が終わり透也は大きく背伸びをする。今日の午後の授業は2時間体育の後国語の授業という中々にハードな内容だった。そのためクラスの大半が眠そうな目をこすりながら授業を受けていた。透也は眠たい目を擦りながらこれから紗奈の家族がくるので早く帰って準備の手伝いでもするか、とスマホを通知を確認すると母からのメッセージが表示されていた。


 「追加で欲しいものあるから帰りに紗奈ちゃんと買ってきてね」


 紗奈は…知らないっぽいし、八組に呼びに行って一緒に行くか。俺は母に適当なスタンプで返信をし、八組へと向かった。

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