第3話  ???

 入学式が終わり各々が自分のクラスへと帰っていく中、彼女、廿楽紗奈の姿はトイレの個室にあった。彼女は先程の事を思い出し、きちんと着ていた制服を乱し、彼女の手は自らの立派な胸の膨らみを鷲掴みにし、自分を慰めている。彼女自身の美貌も相まって今の姿を見たものは男であれ女であれ釘付けになってしまうだろう。先ほどの彼女からは想像もできない姿であった。


 「はぁ…はぁ…やっぱり透也は、うふふ♪」


 彼は今日も暖かく、そして優しい眼差しで私を見ていた。ステージから降壇する際に彼と目が合った時、私はたまらなく嬉しかった。透也に見られるだけで私は幸せに包まれ、同時に胸とお腹の下が疼く。


 その都度私は疼き抑えるため自分の身体を慰める。私はこの時間がたまらなく好きだ。


 「もし透也に触れられでもしたら…ああ」

 「私ったら透也のこと好きすぎ//」


 彼女が急に透也にベタベタすることがなくなったのはこれが原因である。どうして彼女はこうなってしまったのか。


 

 


 中学二年生のある日、いつも通り透也と登校し教室に行くと友達達が何やら騒いでいる。どうしたんだろうと私は友達に近づくと友達も私に気づいた。

 

 「あ、紗奈!早く早く!」


 と手招きしている友達はやけに興奮していて頬を赤らめていた。

一体何の話をしているのか、そんなことを思い話の中心になっている友達を見る。

彼女は中学二年生の年齢にしては周りよりませていて、高校生の彼氏がいる。よく、彼氏の惚気や愚痴なんかも聞いていたので、彼氏関係のことかなと思い、話の内容を聞く。


「美優彼氏とシたらしいよ」

「シた?何をしたの、デート?」

「ちがうよ!!ほら、あれだよ…」


 友達は顔を赤くしてもじもじしている。みんなが何の話をしているのかさっぱりわからなかった。そもそもシたとは何なのか。詳しく聞こうとしたが、友達は顔を赤くして何か独り言をぶつぶつ言って上の空だ。

当の本人に聞くしかないな、と思い友達からの質問攻めを若干めんどくさそうにしている美優に声をかける。


「美優彼氏と何したの?」

「あんたまだ聞いてないの?」

「いや、シたって何をしたのかわからないから」

「あ〜、お子ちゃまの紗奈にはまだ早いかな〜」

「ちょっと!私にも教えてよ!!」


 美優は私を面白がってからかう。私は余計気になり美優に詰め寄ると、美優は「まあいいけど笑」と言った後、顔をニヤリとして私の耳元で年齢にそぐわない色っぽい声で囁いた。


「彼氏とエッチしたの」

「… 、エッ!?!?」


 エッチしたと言う言葉が私の脳にこだまする。中二にもなれば流石に性の知識もついている。ただ紗奈はそういう行為は子供を授かりたい時、はたまた結婚したらするものと思っていたためそこまで興味はなかった。しかし友達が、美優がそういう行為をした。それだけで私はエッチなことに興味が湧いてしまった。


 その後私も質問攻めに加わり美優に質問する。美優は時々恥ずかしがりながらも話してくれた。好きな人と出来てすごく幸せだった。その後さらに彼のことが好きになった、などなど。


「あーもう、あんたらしつこい!そのうちするんだから早いか遅いかでしょ」

「ほら紗奈、あんたはどうなの透也くんとは」


 まさか自分に振られるとは思ってもみず、私は「へっ?」と気の抜けた返事をする。友達達も興味があるのか美優から私に視線をシフトチェンジし見つめている。


 好きな人とエッチをする…私は透也のことを思い浮かべる。確かに透也は優しくて一緒にいると安心するし、スキンシップだって私からベタベタしていた。確かに私は透也のことが好きなんだと思う。かといって透也とエッチをするなんてことは今まで考えてもみなかった。


「透也と私がエッチ…///」


 透也とそんなことするのを想像して私は顔から火を吹いたように恥ずかしくなった。美優たちがニヤニヤして私を見ている。そんなふうに見るなー!とわいわいしていたところでHRを告げるチャイムが鳴り、美優たちは自分の席へ戻っていった。私も自分の席に戻り斜め前の透也をみる。彼は気だるそうに窓の外をぼんやりを眺めている。透也と私がそんなこと…そんなことを考えまた顔を赤らめる。


 私は今日一日中朝のことで頭がいっぱいで、授業のことなど一切入ってこなかった。帰りのHRも終わり帰ろうとしていたところで透也に声をかけられる。


「紗奈、帰るぞ」

「あ、透也、うん…」


 帰り道を歩きながら彼の方を見る。意外に長いまつ毛、鞄を持った腕や手からうっすらと血管が浮き出ている。透也は弓道をしているので腕の筋肉が凄い。透也をチラチラ見ながら歩いているといきなり透也に腕を掴まれ引っ張られ、前から抱き抱えられるように彼の元へ引き寄せられた。


「え、ちょっと、透也 」

「紗奈お前轢かれそうだったぞ。なんか今日ぼーっとしてるけど大丈夫か?」

「あ、ありがとう」


      ドクンドクンドクン

 心臓が飛び出ているかの様に自分の鼓動がはっきり聞こえる。彼に抱き抱えられているこの状況に頭が追いつくたびに胸の高まりが激しくなる。なにこの感情。私は今まで感じたことのない感情に包まれる。頭がクラクラする。これ以上透也の近くにいるのはまずい。


「おい、紗奈大丈夫か。なんか顔が…」

「っありがとうとうや、私帰るね」

「あ、おい」


 透也の胸元から離れ、走って家に帰る。家に着くと母親がおかえりと声をかけてきたがそれを無視して自分の部屋へ向かう。バンと扉と閉め、私はその場に座り込む。


「はあ、はあ、はあ」


 走ってきたので息が上がっているがそれが疲れからくるものなのかはたまた別のものなのか…

私は疼いている自分の胸と下半身に手を伸ばす。早く身体の疼きを止めないと、そうして触れたその瞬間、全身が痺れるような快感に襲われた。私はびっくりしたが不快感は全くなかった。それよりも快感と幸せな気持ちが身体を支配していた。透也のことを思い出すとさらに体が熱くなり下半身の奥が疼いているのがわかる。私は本能でしたこともない慰めをする。


「アッ…透也」


 透也に抱きかかえられたことを思いだし、さらに自分への慰めを強める。慰めるたびに身体が快感に溺れていくのが分かる。私は止めた手を見る。指先は湿っていて糸を引いている。ああ、そう言うことか美優が言っていたことは。


「んふふふ」


 翌日の朝、支度を済ませ家を出ると既に透也が待っていてくれた。おはようとお互い声をかけ、いつも通り腕に抱きつこうと透也に触れたところでその手を引っ込める。

「?どうした。」

「いや、なんでもない…」


 やばい、大丈夫だろうと思っていたけどやはり駄目だった。透也に抱きかかえられた時と同じように全身が熱くなり体が快感で痺れる。透也が少し心配そうに私を見つめる。今、そんな優しい目を向けられたら私…


「ごめん、忘れ物したから先に学校行ってて」

「いや、少しぐらい待つよ」

「大丈夫だから、後でね」

「そうか、じゃあ先いくわ」


透也を背に家へ戻り忘れ物したと言い部屋へ戻る。心を落ち着かせるために深呼吸をする。私の手は自然と胸と下半身に伸び、満足するまで身体を慰めた。


 私が透也を意識し慰める度に私が女であることに気付かされる。しかし透也にこの姿は見せられない。もし見られて嫌われでもしたら嫌だ。


 このままではいけない、今まで通りにはもう出来ない。そう思い、耐性がつくまで私は極力透也に関わらないことにした。


 しかし彼女が透也を完璧に無視することが出来るはずもなく、必要最低限の挨拶や会話はした。その度に誰にも気付かれないよう彼女は自分をを慰めていた。


 「教室ではよく透也と目が合う気がする。透也はよく私を見ている。私のことが心配なのかな?私のことを思ってくれている!!」


 彼女からの視線を感じ透也は見返しているだけなので全くもって彼女の勘違いである。


 気持ちを抑えつつ彼女は表立って彼と関わる事を控えた。


 私だけを見ていて欲しい。また前みたいに包み込んで欲しい。透也は誰にも取られたくない、奪われたくない。透也は私のもの。何が何でも手に入れる。


 紗奈の中にある透也へのこの思いがどんどん強まっている事に気付いていたが彼女は見て見ぬ振りをした。


















 


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