第15話幼馴染

 初めて彼を見た時、思ったことは『不思議な髪の毛だな』ぐらいだった。


 柊灰。それが彼の名前。歳の割には少し大人びていて、それでいて面倒見もいい。頼まれごとをされれば絶対に断らない(多分断れないんだと思う)し、最後まで付き合ってくれる。私もそんな彼に救われた一人だ。


 幼稚園、小学校、中学校と一緒だった彼は私をいつも支えてくれた。

 自分で言うのはなんだか嫌味っぽく聞こえるが、私には才能があると思う。勉強なんてしなくてもテストではいつも90点ぐらいは取れるし、運動だって苦手なものは無い。基本的にそつこなくこなすことができるのだ。

 自分でそれに気づくまではかなりの時間がかかったし、それゆえに他人ができないことに対して理解ができなかった。


 そんな私を良く思わない人は多かった。時にはいじめまがいなことだって受けたこともある。


 でも、そんなときにはいつも彼が助けてくれた。恨みを買ったのは私だと言うのに、いつも颯爽と現れて私を庇う。彼が言うには『才能がある奴が潰れるのは見てられないから』らしい。素直じゃないんだから。

 いつも隣にいてくれる彼に私は次第に想いを寄せるようになって言った。


 彼は少しばかり自己肯定感が低い。自分には才能が無いだとか、周りの奴らならもっとうまくやれていただとか、そんな小言を溢してばかりだ。私からすれば周りよりかは秀でているように見えるけど、本人からすればそうでも無いらしい。

 彼の自己肯定感の低さには呆れたものだ。そこが可愛いのだけれど。


 きっと彼なら私のことを理解してくれる。彼以外にそんな人なんていない。きっと彼は運命の人なのだ。

 そう思っていた矢先だった。


 突如としてやってきた転校生。まるでお人形さんみたいに整った容姿で、取り巻くオーラは他の追随を許さないほどに風格のあるカリスマ性。

 水無月彩亜。それが彼女の名前だ。

 

 彼女はあっという間に私から彼を奪い去っていった。急に現れたくせに、召使いだの、運命共同体だの、勝手なことばかり言ってくれる。灰くんだって強く言わないから好き勝手されるのだ。あのにぶちんめ。


 私は許せなかった。彼が彼女の隣にいることが。我ながら思い上がった感情だとは理解している。彼が誰の隣にいるかなんて彼が決めることだと言うことも。

 そうは分かっていても、私は許せない。灰くんの隣は私のものだ。今までいろんなものを失ってきたけど、彼だけは譲れない。


 だから私は決めた。実力で決めてやる。彼の隣を彼女から奪い返す。彼の隣に相応しいのは私だ。彩亜あいつじゃない。

 だから私は突きつける。彼女に挑戦状を。


「私と生徒会選挙で勝負だ!!!」

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