第12話
「なんか殺風景な部屋だな。女子の部屋だとは思えない」
それはまさに、僕がはじめに彼女に抱いた印象と同じだった。
もちろん、人間に対して殺風景という感想を直接抱いたわけではないが——初めて彼女と話した時、その人間性の質素さ——否、殺風景さに、女子らしくないと、思った。
しかし、彼女と付き合ううちにそういう考えは変わっていったが……彼女の本質は変わらず殺風景だ。
そしてなにより、再び降り始めた雨が、盛り上がった僕らの熱を抑える。
「君は、素直になる場所を選ぶのが下手だね」
僕の隣に座り、晴家さんは静かに語る。
僕はその意図が正しく読み取れなくて、思考する。
「嬉しくないこと言ってくるなって意味」
補足を聞いて僕は得心する。
「あいにく、僕はひねくれているので」
「あー痛い痛い。なんでそんなんなのさ」
静寂。
理由なんてないから、特に喋ることもなく。彼女も本気で知りたいわけではなさそうで。
その静かさが心地よかった。少なくとも、僕は。
どれくらい雨の音を聴いただろうか。
「もしわたしが消えたら、星はどうする?」
少しの思考で答えるにはあまりにも重く、しかし答えは決まりきっている。
「……どうもしない」
晴家さんは、安心したように薄く笑う。
雨の音が、においが、現実感を奪う。
それから彼女は無邪気な笑みに戻って。
「なにしようか。あんまりゲームとか持ってないけど」
「せめてなにかやること考えてから誘えよ」
「うるさい。行く場所なかったんだから仕方ないでしょ」
そうかな……。そうかも……?
それなら解散すればよかったような気もするが、触れないでおく。
「じゃあ、もう少し話をしよう」
僕は提案する。何の目的もなく、誰にも邪魔されずに、互いの意見をすり合わせる、そういう対話を、僕は何ともなしに気に入っている。
「話? いいけど、なんの話をするの?」
「そうだな……哲学っぽいやつがいい」
「ふーん。そういうのはわたしも嫌いじゃない。どういう死に方したいかについて話すのとか、どう?」
何気ない提案だったかもしれないが、僕にはそれが深く刺さって。
「それ、いいね」
生き方でもなく、生きる意味でもなく——死ぬ方に目を向ける。
「わたしは」
「雨の中に溶けるように死にたい、だろ。どうしてそう思うのさ?」
「もう誰にも、迷惑をかけたくないから」
意思のこもった言葉。
僕はその真意を追及できなかった。
俯いた彼女の顔は、見えなかった。
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