第11話

「もう一個、星の痛いところ言ってもいい?」


「嫌だよ拷問かよ」


「わたしは星のこと名前で呼んでるのに星はチキってわたしのこと苗字にさん付けで呼んでる」


「嫌だろって言ってるじゃん。あと別にいいでしょ」


 こいつ性格悪い……あ、いやこいつはずっと性格悪かったか。


「君の方が性格悪い」


「読むな心を。あとそれを決めようとするのは何も生まないからやめよう」


 話しながら、僕は会計を済ませる。


 一文無しの分際で晴家さんは人に性格が悪いなんて言えるのだろうか。いや、言えない(反語)。


「で、ご飯食べたけどこのあとどうするの? 晴家さんの家の近くのテーマパーク?」


「そんなお金があったらここには来てないよね。とりあえず星の家に戻ろうか」


「戻らないよなんでだよ」


「行く場所がないんじゃん」


「ないのはお金じゃん」


 僕の完璧な論破に、晴家さんは反論の余地なく沈む。どんまい晴家さん。


 しかしまあなんにせよ、この先やることがないのは変わらず、僕は一人の時間も大切にしたいたちではあるので、そろそろ解散を提案しようと思っていたところ――


「じゃあ、わたしの家来る?」


 彼女が余計なことを言った。そもそも君の存在が余計なんだから余計なことするな。邪魔だ帰れ。しかしまあ願いとは常に儚く消えるものであって、叶えるものではない。帰れって言ってみたら、俺も一緒に彼女の家に連れて行かれることになった。南無阿弥陀仏。


 何度も余計なことをするなと言っているだろうに、なんでこう余計なことをするのか。ガチで黙れよ。


 なんで僕が急にこんなにキレているのかというと、理由は単純で、ここから彼女の家まで自転車で一時間半以上かかるからだ。電車を使えと言われても、彼女が自転車で来てしまったのだから仕方ない。


 まあ、仕方ないで済んだら警察が職を失ってしまうので、通報したい気分ではあるが。


「ごめんね、自転車でこんな距離走らせちゃって」


「本当に心から謝罪しろ」


「言葉強くない?」


「我慢して、君が悪い」


「気味が悪い? いくらなんでもそれは言いすぎでしょ!?」


「いや、こんなに長時間自転車を漕がせた君が悪い」


「そんなに自転車漕ぎたくなかった!? それはごめん……」


「いや、いい。君が悪いって認めてくれるなら」


「いや気味は悪くないでしょ」


「いや僕なんもしてないけど」


「いや君は関係ない……って、そういうことか」


 晴家さんはなんか納得したみたいだった。僕は何も納得してない。一体何なんだよ。

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