第5話

「きみはもうわかってると思うけど、わたしのいつものは完全に演技だよ」


 案外に軽い感じで、晴家さんは打ち明ける。軽い感じで言っていながらも、ちらちらと周囲を気にしているのが面白い。


「まあ、そうだろうね。どうして?」


「本質はきみと同じ。ただ、わたしは単純に本当の自分を見せるのが怖いから隠してる」


 本当の自分を見せるのが怖いから隠しているのに、僕には本当の自分を晒すということは……?


 いったんその考えからは目を逸らそうと一呼吸する。


「きみは、こう見えて信用できるんじゃないかと思って」


「……こう見えて、ってなんだ」


「だってきみ、喋り方からなにもかも怪しいじゃん」


「失礼な。なんてこと言うんだ」


「知り合いに訊いたら、十人中十人は怪しいって言うと思う」


 完全に印象のせいでそう思われているだけなのに、否定する材料もないので受け入れるしかない。


 あー僕ってそんなに怪しいんだ。もうちょっと別のキャラやろうかな。誠実な感じで。これまではふざけすぎたかもしれない。


 割とガチでショックを受けていると、晴家さんが話題を変えた。


「で、わたしのことは話したけど、どうなの?」


「どうなの、って?」


「わたしに全ベットするつもりになった?」


 そうだった、完全に忘れていたけどそういう話だった。


 なんか怖いので理由をつけてナシだと伝えたかったが、よくある話ながらも晴家さんがなんか可愛らしくて困る。


 こっちも向こう側の秘密を知っていることだし、これはもう一心同体でいいのでは。


 どうやら僕は、想像以上に、過去に類を見ないほどに、晴家さんに惹かれているみたいだった。


「まあ、全ベットとはまた違うかもしれないけど、晴家さんのことは結構好きだね」


 晴家さんはわかりやすくにやつく。それが本当の彼女の姿なのかはわからない。

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