第5話
「きみはもうわかってると思うけど、わたしのいつものは完全に演技だよ」
案外に軽い感じで、晴家さんは打ち明ける。軽い感じで言っていながらも、ちらちらと周囲を気にしているのが面白い。
「まあ、そうだろうね。どうして?」
「本質はきみと同じ。ただ、わたしは単純に本当の自分を見せるのが怖いから隠してる」
本当の自分を見せるのが怖いから隠しているのに、僕には本当の自分を晒すということは……?
いったんその考えからは目を逸らそうと一呼吸する。
「きみは、こう見えて信用できるんじゃないかと思って」
「……こう見えて、ってなんだ」
「だってきみ、喋り方からなにもかも怪しいじゃん」
「失礼な。なんてこと言うんだ」
「知り合いに訊いたら、十人中十人は怪しいって言うと思う」
完全に印象のせいでそう思われているだけなのに、否定する材料もないので受け入れるしかない。
あー僕ってそんなに怪しいんだ。もうちょっと別のキャラやろうかな。誠実な感じで。これまではふざけすぎたかもしれない。
割とガチでショックを受けていると、晴家さんが話題を変えた。
「で、わたしのことは話したけど、どうなの?」
「どうなの、って?」
「わたしに全ベットするつもりになった?」
そうだった、完全に忘れていたけどそういう話だった。
なんか怖いので理由をつけてナシだと伝えたかったが、よくある話ながらも晴家さんがなんか可愛らしくて困る。
こっちも向こう側の秘密を知っていることだし、これはもう一心同体でいいのでは。
どうやら僕は、想像以上に、過去に類を見ないほどに、晴家さんに惹かれているみたいだった。
「まあ、全ベットとはまた違うかもしれないけど、晴家さんのことは結構好きだね」
晴家さんはわかりやすくにやつく。それが本当の彼女の姿なのかはわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます