第2話
「案内するって言っても、どこに行こう」
「ここ、なにもないの?」
「人気テーマパークと馬鹿でかい公園と郷土博物館」
「じゃあテーマパークにしようか」
女子は基本そういうのが好きだと、僕は知っている。
「無理。お金がない」
明るくて可愛い彼女は、散財もしすぎてしまうようだ。仕方ない、陽の者なんだから。
「じゃあ馬鹿でかい公園。もしかして海見れる?」
「この辺ならどっからでも見れる」
「はは、面白い場所だ」
意味がわからない、といった目で僕を見つめる。
「まあ、いいや。公園行くなら一緒に歩こう。そんなに時間はかからないから」
それだけ行って彼女は僕に背を向け、歩き出す。公園に向かうらしい。
夏の暑苦しい空気に、湿った潮風の匂いが相まって、呼吸が浅くなる。……嫌な予感がする。
しかし、直感的で主観的なそれを口に出すのは躊躇われて、僕は口を固く引き結んだまま晴家さんの後ろに続く。
「着いたよ、公園」
海といっても、僕らが真っ先に想像するような色鮮やかに光り輝くような砂浜と海ではない。
一面の芝生に遊具が設置された公園の端、策で仕切られたその奥に海が広がっている。
終業式の日の公園は明らかに人が多く、静かに会話をするには向かないであろう場所だった。
「なるほど、確かに公園だ。海も見える」
「なにか不満がありそうだね」
「不満というわけじゃない。ただ、本当になにもないんだと思っただけだ」
本質的にはなにも変わらない僕の言葉に苛立ってなのか、彼女は教室では絶対に見られないような不機嫌な表情をする。
「なにもないなりに、いいところだ」
軽くフォローすると、彼女は機嫌を取り戻し、ほんの微かに満足げな表情を覗かせる。
「ところで、雨宮くんのそれは、演技なの?」
唐突な問いかけに、混乱する。うわー、どう答えればいいんだろう。
「それって、どれ?」
彼女は取り戻した機嫌をまたどこかに投げつけてしまったみたいだ。
しかし、親切なことに、彼女は改めて説明してくれた。
「その道化みたいな言動」
「そうだね……意識したことはないよ」
しばらく考え込んでから答えると、彼女は明らかにまだ不満そうだった。
「……いったんはそれで納得しておく。絶対そうじゃないと思うけど」
鋭い言葉に僕は胸を抑える。「言刃」とも言うくらいだから、言葉には気を付けてほしいところだ。
だが、彼女はそれすらも演技だと思ったのか、不完全燃焼気味に僕の方から視線を逸らす。
「……」
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