第90話 理由がないなんて恐怖でしかない

グリミー逮捕。


全国放送のテレビやラジオのニュースで流れた。その日の夕刊や翌日の朝刊の一面記事となった。


あるワイドショーのコメンテイターが言っていた。


『2024年問題に向けた取り組みに国がどれだけ危機感を持って行なってきたかの表れでしょうね。ある意味、見せしめ的なものも感じます。おそらく、これがきっかけで業界全体が取り組みを強化するのではないでしょうか。対応に迫られると思います。』


別なワイドショーでは、


『ソシオパスじゃないかという情報もあるようですが、難しい問題ですよね。罪悪感が感じられないとか、欠如している人による一方的な欺瞞行為ということですから。ターゲットにされると逃げるのは難しいと思います。』


『そのソシオパスの割合が高い事業所だったのではという情報もあります。』


『法的機関やハラスメント相談窓口に臆せずに通報できるような会社からの理解も必要ですよね。』


『会社が長期間にわたって放置していたということのようですが』


『人手不足だし、逆に訴えられてしまうということで放置してしまうような仕組みになってしまったのではないでしょうかね。』


『被害者からしてみれば堪ったものじゃないですよね。普通に仕事しているだけなのに知らないうちに裏工作されて悪者に仕立てられるなんて。』


『本当にそうですよね。精神鑑定もあり得るのでないでしょうか。』


グリミーは、こんな感じで社会問題化された。


新聞には、


グリミー逮捕!


1号、2号、6号、7号も逮捕!


長期間にわたって偽計業務妨害を繰り返していた疑い。グリミー容疑者は自ら教えた同僚に対して、その通りに業務を遂行していたにもかかわらず、裏工作をして悪者に仕立てる等の欺瞞行為を繰り返し、ハラスメントを繰り返していた。新人キラーという異名もあり新入社員に対して欺瞞行為を繰り返し退職に追い込んできた経緯もある。


こんな感じだった。


数日たって、


草加部と大沢はこの5人に対して民事訴訟を起こすか検討していた。やるなら連帯ではなく個別に慰謝料を請求したい。これはできるのだろうか。などと相談していた。


それぐらいやられてきた。


こういう幕引きになってしまったのが残念だ。この5人は何がしたかったのかが分からない。


理由なくというのは恐怖でしかない。


頼むから理由がありますように。



ーつづくー


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