第70話 ソシオパス②

Grimm is endless

Grimmは、残忍、おぞましい。グリム童話のGrimm。

endlessは、終わらない、終わることがない。

〈残忍でおぞましい出来事が終わらない。〉


グリミー(Grimmy)の渾名はここからつけた。真夜中に大沢君と議論に議論を重ね、


Grimmに「絶対にイーをつけたい」と大沢君がこだわった。


理由は、東藤の無意識に出てくる「キー」の母音だからだ。


Grimmキーは変でしょ。

Grimmイーは何となくいいでしょ。


endlessの頭文字もイーだったので「そうだな」ということになった。


「じゃあさ、英語っぽくGrimmyはどう?」と草加部が言って、最終的に決まった。


ソシオパスなら説明が付く。

ここまで、人を貶めることを繰り返せる人間はいないと思う。異常な執念を感じる。そして悦に浸りほくそ笑んでるのを思い出すだけでおぞましいし残忍だ。グリミーを観察していると承認欲求から来ているのではないかと感じる。自分をよく見てもらいたいというのが簡単に分かる。それだけ短絡思考で衝動的なのだろう。悪口を言い触らし、自分を優越的な立場にして、自分はやっているけど夜勤がちゃんとやってないんですとわざとらしいテキパキした動作でアピールするところ。職人気質の性格なところがあるので巧妙かつ狡猾。そして悪口で人をコントロールしようとする。


あのネットで調べたやつに、ここまで ”はまる人” っているか?


これを典型的と言うのではないだろうか?


Grimm is endless

残忍、おぞましい

終わらない、終わることがない


Grimmy

ピッタリの渾名じゃないか。


ソシオパス。


社会病質者を意味する用語。批判するなら批判すればいい。人格障害だから仕方がないで済まされるか?世の中にはこういうので自殺している人がいるんだ。そこまで追い詰める非情なやつなんだ。だけど罪悪感がないんだとさ。


残忍でおぞましい。


本当に相手にしてはいけない相手。それがGrimmyグリミーだ。



草加部はショックだった。こういうものに対しての免疫がないのだ。こんなことを考えなければならない環境にいたことがない。人口の4%、受刑者で47%。ここの占めてる割合が高くないか?鬱やノイローゼになる気持ちが分かるような気がする。人間不信気味になるのも当然だ。心が悲鳴を上げてる。防御本能が働いてるのかもしれない。


それともう一人気になっている。


グリミー6号の伊藤だ。

ガニ股でチョボチョボと歩幅が狭く、リュックを背負っていると小学生に見える。


ソシオパスか~



本当に説明が付く。

もろこのまんまだ。東藤と伊藤は間違いない。他の3人とは程度が違う。おそらく思考の強弱というか表に出る程度というのがあるのだろう。


今までのことを振り返っていた。


草加部が入社したての頃、荷降ろしの途中でわざとらしい大きな足音を立てて草加部のところに来て、「用事があるのであとお願いできますか」と来たことがある。草加部はどうして俺に言うの?と思い、東藤とカケルの顔を見たが知らんぷりされたので、「事務所に偉い人がいるから偉い人を通してください。」と言ったら、とてつもなく、へんてこりんなことを言われたかのような表情をして、大きな足音をさせて事務所に走って行ったが、すぐに出てきてドタバタと足音を鳴らして荷降ろしに戻り、異常な大きな音を出しながら、わざとらしく慌ただしく荷降ろしをして、被害者にでもなったかのような感じで走って帰ったことがある。


その後も、子供の病院の予約が入っていると言われることが続いた。草加部が所長に電話で許可を取って下さいと言ったら、またしても、おかしなことを言われたかのような態度をされ、「用事があるのに、いい歳してこんな判断もできない人」と風評を流された。


大型ドライバーは寝ないで走って来てるんだから、帰って来たら構内作業員は「お帰りなさい」って走って来て、「あとはやっておきますから上がって下さいと言うのが本当なんだ」と言われたこともある。物凄い違和感を今でも覚えている。


ここ最近だと、入ったばかりの林に・・・・


んっ、もしかして入ったばかりの作業員をターゲットにしてるのか?


ここ最近だと入ったばかりの林に、「おめえらは2024年問題のこと知ってんの?おめえらが荷降ろしして、俺らを帰らせなきゃダメなんだよ。なんでこんなことも分からないの?」と言っているのが聞こえてきた。荷降ろしの手伝いを正式にすると決めてすぐのことだった。自分で上司に提案するなり、自分の口で提案をすればいいのに、いつも構内作業員に言う。


とにかく愚痴が多い。カイさんもうんざりしているところがある。作業員に言ってもしょうがないことを繰り返す。


まだ、正式に荷降ろしを手伝うと決めていない頃のことだったが、草加部には、グリミー伊藤とグリミー榊の愚痴が呪いの言葉に感じることがあった。愚痴を聞かされると、やってあげなくちゃという気持ちに少なかれなる。忙しくて手伝えないと、その愚痴という呪文が唱えられたあとに、「ひでえよな」というさらなる呪文が放たれ、作業員が何か悪いことをしたかのような気持ちなり、手伝わないといけないと義務でもあるかのように感じてしまい、それに伴った行動を取ってしまう。それが頭から離れない。もう呪縛にはまっている状態なのだ。それは今でも続いている。


相手はソシオパス。


とりあえずは決めたとおりに手伝ってはいるが、グリミー伊藤が林に言ってたことが問題に感じる。


これが、グリミー(ソシオパス)の思考であり解釈なのだ。


”そういえばもらってたじゃん。相談窓口の連絡先。”


ん~


距離をおく、接近禁止命令、受刑者47%、非情、期待しない・・・・・・


封印、干渉


大沢君がお互いに干渉しないようにできないかって言ってたな。


だから、役割分担を明確にして線引きしたいんだよ。それだけなんだけどな。お互いに自分の仕事は自分でやればいいだけなんだよ。


“あっ、おー、ひらめいた。”


シンプルにこの線引きでいいじゃん。線引けばいいんだよ。


お互いに干渉しない線を引く。結界を張る。


今やろうとしている改革でいいんだよ。


サイコパスだからソシオパスだからという理由じゃない。


周りを困らせて混乱させられていることに対しての対策を講じたいだけだ。業務に支障をきたす。草加部も現実に自殺を考えるまで追い詰められたことがある。何かしらの対策を講じなければこっちがやられる。対策を講じる権利を認めてもらいたい。生きる権利。


これは差別意識じゃない。


区別だ。

自分の中で区別、整理をする術を持たないと自分の精神が崩壊する。死ぬ。


決して大げさなことじゃない。


ーつづくー


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