第67話 工作員の誤算。
今村が出した答えは、“泳がせておこう。”
今村は業務に戻った。
“時間がある時に読んでみよう。”
綿貫は、自分の車の中にグリミーの似顔絵を置きに行った。
喫煙所でタバコに火を着けた。
“まさか、お礼にくるとは思わなかった。誤算だ。あまり目立つとマズイ。”
そして、綿貫は休憩室に戻り営業所に戻る時に買ってきたコンビニ弁当を食べ始めた。
そして、頭の整理をしていた。
“自分の任務は、運送業界のイメージアップ作戦の歯車としてモデルケースを作ることだ。その為に、グリミーとナイトワーカーズを利用している。弐零弐肆は、業界全体のハラスメントでの離職率を下げたいと目論んでいる。2024年問題はあくまでも時間外労働の厳正化で働く時間が今までより減るから、その減った分の労働力が不足して物流が滞るのではないかという懸念に過ぎない。業界はもっと自分の足元を見て離職率を下げる努力や教育が必要だ。保育士の菊池さんを見習うべきだ。
幼少のうちから、
いじめっ子は、カッコ悪い、ダサい、臭い。
グリミーになっちゃうよ。
グリミーになりたくない。
こんなふうになりたくない。
と教える取り組みは素晴らしいと思う。
これを世に広め、国家が先導し運送業界にハラスメントはカッコ悪い、ダサい、臭いという教育をする。同時進行で幼稚園、保育園、小学校、中学校での教育にも入れる。
さすがに自分の子供に、「パパ、グリミーになっちゃったの?」なんて言われたくないだろう。
グリミーをハラスメントの代名詞にする。
これが弐零弐肆が考えるキャラクター化だ。もしかしたら世界中に広められるかもしれない。”
綿貫は頭を整理し次にやることを考えた。
保育士の菊池さんに、ナイトワーカーズから許可を取るように言わなきゃいけないな。
テレビの取材にくるのが来週の金曜日。早い方がいいだろう。
12:38分
綿貫は、コンビニ弁当を食べ終わり、ゴミを捨ててホームに向かった。
この時、構内作業員は、“昼便”と呼んでいる便の対応で、コの字では、グリミー、カイさん、林の3人で仕分けをしていた。
残暑はまだまだ厳しい。グリミーは左肩を回しながらしかめっ面をしていた。
後から聞いた話しだが、グリミーと林が喧嘩になり、関係性が既におかしくなっているらしい。カイさんには結界を張られてるし、何がしたくてこういうふうにするのだろう。
結界とは仏教用語らしい。
結界を張るとは、空間を内と外に分類し、内を聖なる空間、外を俗なる空間と見なす行為。内側の清浄を保つため、また魔の侵入を防ぐ目的がある。
よく相手にするなと言ったり言われたりすることがあるが、それぞれ生きてきた環境が違う。どの程度の教育を受けてきたかも違う。ソシオパスというのもある。世の中には、本当に相手にしてはいけない相手がいる。
古来からそういったものはあったのではないだろうか。
結界を張るとは、その教え、精神衛生上の棲み分けという解釈をしたら間違いだろうか。
現代でも、こういうのはあるのではないだろうか。
ーつづくー
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