第65話 グリミー伊藤 めんどくさいな~

そして、8月1日(火)朝の6:20分

今日から、荷降ろしの手伝いを正式にやることになった。


今村がグリミーに提案の内容を説明したら、「手伝うべきですね」と即答したらしい。


カイさんは手伝うのはいいですよということだったので、正式な指示として3人に役割分担を明確にすることと構内作業員の役割を説明し、朝の時間帯だけ、2024年4月からの時間外労働の厳正化への対策と配達ドライバーへ早く繋げ、少しでも余裕を持たせるという趣旨で荷降ろしを手伝うという説明をした。


そして、大型ドライバーにはグリミー榊に伝え、榊から伊藤、沢寺、仲下へ伝えてもらうことにしたということだ。


作業自体はなんてことはない。今まで曖昧ながらもやってきた。何も変わらない。正式に組織的にやり始めると決めただけだ。


今日はグリミー伊藤だった。草加部が荷降ろしに入った。コの字には、グリミー、大沢、カイさんがいた。7月から林が入社したので6時から4人体制にした。


グリミー伊藤が荷降ろをしながら、草加部に話しかけた。


「家のテレビは何インチ?」

「えっ、気にしないで買ったから、あれって何インチだ?」

「30何インチとか?」

「いや、60・・・、分かりません。60インチじゃないんですよ。60何インチなんですよ。すいません、あれは衝動買いしたから気にしてなかったです。なんで?」


「韓国製?」

「いや、日本ですけど・・」

「これからは4kも見れるテレビにしないと。」

「いや8kですよ。」

「・・・」

「いや、安かったんで買っちゃったんですよ。」

「へえ~いくら?」

「23万でした。定価80万が。買いでしょう。」

「部屋に置けんの?」

「え?・・・余裕ですけど。」

「アパートじゃないの?」

「いいえ」


“何が言いたいんだ?”


「伊藤さん、さっきから何の話し?」

「安月給の構内作業員なんかして老後は大丈夫なのかなと思って。」

「大丈夫ですよ。」

「大型免許は持ってないの?」

「持ってますよ。」

「なんで、稼げるのに大型ドライバーやらないの?」

「洗車が嫌いなんです。」

「やったことはあるの?」

「ないです。内勤の方がいいからこの職業を選びました。」

「どこがいいの?」

「トイレがあるところが。だって、トイレ大変じゃないですか。」


「投資は?」

「してます。」

「俺はいくらだっけな~220万位だったかな~」


“もしかしてマウント取りたいの?”


「ほー何の投資ですか?」

「やっぱり投資というのは、労力を使わないで増やせるようにプロにお任せしてます。」


伊藤の話し方は鼻高々な言い方だった。


「プロって?」

「投資信託。」

「それならやってますよ。アメリカのやつで毎月分配金もらってますよ。あとは日本の個別銘柄は持ってますけど。」


“なんなんだ。”


「船に乗ったことはある?観光地のじゃなく。」

「船?ヨットならありますけど。」

「あるの?」

「え?ありますよ。だけど、座ってると太腿の日焼けが嫌で好きじゃないです。」

「俺、船持ってんだよ。」

「ほ~それは凄いですね。」


「海外には行ったことある?」

「はい、ありますけど」

「どこ?」

「ハワイ、サイパン、香港」


荷降ろしが終わった。

二人で降ろしたから、荷降ろしの台車は溜まりに溜まっていた。


構内は雄たけびが飛び交っていた。


キーーーー!キィー、

ウキィー、ウキッ

ウホウホウホ、ウッホウッホホ


草加部は、「仕分けに戻ります。」と言ってコの字に向かって仕分けに入った。


“めんどくさいな~”


ーつづくー

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