第24話 どうしてそういうこと言うの?

 朝焼けに感動しながらも、現実は何も変わらない。どんよりと憂鬱な空気。気持ちが負ける。大沢の表情も緊張と憂鬱、疲労で強張っている。


 あと50分くらいで関東便が戻る。


 “パレット、けっこうあるな。”


 草加部は、バラの荷物の仕分けよりもパレット物を片付けることを優先させることにした。


「よしっ!大沢君!」と、気持ちを入れ替えた草加部。

「パレットやって。」

「はい。」

「ゴタゴタしてて狭いから落ち着いてやって。」


 大沢は、パレット物の方を見て走って行った。


 まずは、3列に並んだパレット物の荷札を確認して、フォークに乗り電源をカチッと入れた。

 狭い構内、荷物が載った台車でさらに狭くなった構内で大沢は頑張る。


 一枚、一枚を丁寧に運んだ。すぐに置ける段取りをしていたこともあり、それが大沢の頭にも入っていたからけっこうスムーズだ。


 半分くらい運んだ辺りで、大沢が運転するフォークが台車にぶつかった。ガーンと結構な音が響く。


 “狭いから仕方ない。でも、なぜ、そこでぶつかる?(笑)”


 大沢は何もなかったかのようにフォーク作業を続ける。


 “そうだ、それでいい。こういう時は動じずにぶつかるのは分かってたよ的にやればいい。”


 草加部がプロに見えるフォークの乗り方として教えたことだ。


 大沢の調子が出てきた。


 荷物をバックで運んでいて曲がり切れないところを、荷物を障害物より高く上げて、クイッとなに喰わぬ顔をして曲がって行った。


 次のパレットを運ぼうとした時、

「ちょっと貸してっ」と低い太い声がした。


 グリミー村上だ。


 もう一台フォークがあるのにいつもだ。ハンドリフトでもいいじゃないか。


 大沢と交代したグリミー村上は、急発進で乱暴で雑に走りだした。急ブレーキに近い止まり方をして荷物を持ち上げ、その辺の台車にガンガンと打楽器と勘違いしているかのように自分の担当荷物をホームまで運んだ。


 大沢は、その辺にあるハンドリフトでパレットを片付け始めていた。

 グリミー村上が使い終わったフォークリフトはホームに置かれたままになった。


 川中が出社してきた。

「おはようございます。」

 と、川中が村上の方へ歩いていた。


「おはようございます。」と村上の太い声。

「あいつら仕事しねえでウキィー、夜中からこのパレット置きっぱなしにしてたんだよ。ウギーィー!」

「そうなんすか。」

「ダメなんだ、何回言っても仕事しねえんだ。ギー」


 川中は、朝イチに配達するところの担当を持っているので出社が早いのだ。グリミー化はしていないがキツイところがある。ちなみに、朝イチに配達するところとは、緩めのドレッドヘアのグリミー沢木と同じところ。沢木は2階で川中が1階だ。


“そうだよ、この時間で十分じゃないか?”


 運送会社の朝は早い。この時間から、どんどん出社してくる。


“あっ、グリミーの車だ。”


 グリミーこと東藤は6:00から出勤。きっちり15分前に来る。そして、車内でタバコを吸ってから事務所に向かう。


 どんよりとした憂鬱さが増した。


 草加部はバラの仕分け、大沢はハンドリフトでパレットをしていた。


 それよりも草加部は、この仕分けの進め方を組み立てていた。


 ーつづくー

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