第6話 夜間作業 21:00台
草加部は、いつものフォーク作業。今あるパレット物の荷物を、配達する日付と配達先を一つ一つ荷札で確認して整理しながら、これから入ってくるであろうパレット物を置くスペースを作る作業をしていた。
相変わらず、お腹が揺れていた。
草加部は、今村所長との会話を思い出していた。
飼育 役三。
渾名は“飼さん”。
呼びづらい名前なので、カイさん、カイちゃん、カイと周りは呼んでいた。草加部よりも勤続年数が15年も長いので、年齢は上だが草加部はカイさんと呼んでいた。カイさんは、おしゃれが好きで、ファッションは体型作りからと考え実行しているタイプで、モデルだと言われたら信じてしまうような体型だ。ファッションのために金髪にしているらしい。
草加部は、“野生の王国”と揶揄していたが、カイさんは“動物園”。しかも“飼育”。
“俺とは器というかキャパが違うんだろうな。”
大沢君は、各方面のホームを一つ一つ片付けていた。整理ではなく片付けていた。とにかくゴタゴタ感が凄かったのだ。今日はたまたま大沢君がやっているが、特にどっちがやるとは決めていない。その時の流れだ。ちなみに土曜日の夜はもっとゴタゴタだ。ヤバい。グリミー達が早く帰りたい欲求に駆られて動物的本能のままに帰ってしまうのだ。
21:32分 ひと通りは片付いた。
「大沢君、一服しよう。」
「はい。」
草加部は外にある喫煙所に向かった。
ここは小さな営業所だ。タバコが吸いたくなったらすぐに行けるところにある。
タバコに火を付け、深く吸い込み、フーと煙りを吐いた。もうすぐで横持ち便が入る。今日の発送の引き取りは重なるのだろうか。頭の中でシミュレーションをしていた。
喫煙所から見える道路を挟んだ向い側に公園がある。そこでバスケットをしている若者達がいた。楽しそうな笑い声と掛け声で賑やかだった。歩道の街路樹が草加部は好きだった。たしかアオダモという木だったと思う。
タバコを吸い終わると、草加部は灰皿にタバコを押しつけて消し、
あ~今のうちにトイレ掃除やっちゃうかとトイレに向かった。
大沢君は、ゴミ箱のゴミを集めていた。1枚150円のゴミ袋がもったいなくならないようにパンパンにして、運送会社ならではの黄緑色のビニール製のガムテープで蓋をする。
21:56分 横持ち便が到着。
大型トラックがバックする音がピーピーと響いた。
その音に反応した草加部と大沢は身構えた。
グリミー4号ことグリミー大森、59歳。長年荷物の積み降ろしに従事してきたせいか、少し腰を曲げて前かがみぎみでがに股だ。
大沢君は、自分に言い聞かせるように呟いていた。
「ゴリラ」
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