第3話 グリミー予備軍
ここは、とある運送会社のとある営業所。
とても穏やかな天気だ。
今日も構内では、
キーー!キーー!ウキー!
バーーン!という音と共に甲高い声が響いている。
ウキーーー!
バーン!
グリミーこと東藤はニヤけていた。
今は朝の6時40分。関東や新潟から戻ってくる大型ドライバーが、途中の集約店に立ち寄り、荷物を積んで戻ってくる時間帯。
この時間は忙しい。混雑し、殺伐とした雰囲気で、構内作業員の日勤も出勤してきて、夜勤と入り交じって作業をしている。これが落ち着けば夜間作業員は帰れる。
Grimmy 1号と2号が荷物を台車に叩きつける音。バーン!
「またかよ!仕事ちゃんとやれ!夜なんか暇なんだから。」と夜勤が間違えたものではないのに夜勤を集中攻撃。
作業員のグリミー予備軍の1人が、キョロキョロしながら仕分けをしていた。
夜勤が誤仕分けをしたように見せるために、別な荷物をグリミー1号と2号が担当する方面の台車に紛れ混ませていた。
グリミー 1号と2号はそれを見逃すはずがない。
ウキーー!バーン!と台車に叩きつけ、
「ちゃんとやれよ。分かる?言ってる意味分かる?」と、これ以上ない屈辱的でバカを相手にしてるような言い方で、1号の嵯峨が夜間作業員を睨んで言った。
グリミー予備軍の佐々翔琉は、グリミーに、
「東藤さん、あいつら間違えてばかりで、まだ分かってねえよ。」と、夜勤の我々に聞こえるように、周りにも聞こえるように歩き回りながら言い続けた。
佐々翔琉は、グリミー 3号を狙っているのだ。
グリミーは、自分の尊厳が満たされたのか、ニヤりとして、抑え切れなかったのか「キー」と声を漏らし、真顔に戻ったかと思えば、わざとらしい、しかめっ面になり、自分は完璧にやってるんだけど、夜勤がダメなんだと言わんばかりに、かしこまったキビキビした動作で作業を続けた。
グリミーの狡猾で丁寧な段取りは、今日も上積みが出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます