第3話 グリミー予備軍

 ここは、とある運送会社のとある営業所。

 とても穏やかな天気だ。

 今日も構内では、

 キーー!キーー!ウキー!

 バーーン!という音と共に甲高い声が響いている。


 ウキーーー!

 バーン!


 グリミーこと東藤はニヤけていた。


 今は朝の6時40分。関東や新潟から戻ってくる大型ドライバーが、途中の集約店に立ち寄り、荷物を積んで戻ってくる時間帯。


 この時間は忙しい。混雑し、殺伐とした雰囲気で、構内作業員の日勤も出勤してきて、夜勤と入り交じって作業をしている。これが落ち着けば夜間作業員は帰れる。


 Grimmy 1号と2号が荷物を台車に叩きつける音。バーン!


「またかよ!仕事ちゃんとやれ!夜なんか暇なんだから。」と夜勤が間違えたものではないのに夜勤を集中攻撃。


 作業員のグリミー予備軍の1人が、キョロキョロしながら仕分けをしていた。


 佐々 翔琉ささかける(48) 構内作業員。最近、髪が薄くなって、おでこが広い。やせ形で身長172cm、虚言癖があり、会社をずる休みしても、バレていないと疑わないタイプ。


 夜勤が誤仕分けをしたように見せるために、別な荷物をグリミー1号と2号が担当する方面の台車に紛れ混ませていた。


 グリミー 1号と2号はそれを見逃すはずがない。


 ウキーー!バーン!と台車に叩きつけ、


「ちゃんとやれよ。分かる?言ってる意味分かる?」と、これ以上ない屈辱的でバカを相手にしてるような言い方で、1号の嵯峨が夜間作業員を睨んで言った。


 グリミー予備軍の佐々翔琉は、グリミーに、


「東藤さん、あいつら間違えてばかりで、まだ分かってねえよ。」と、夜勤の我々に聞こえるように、周りにも聞こえるように歩き回りながら言い続けた。


 佐々翔琉は、グリミー 3号を狙っているのだ。


 グリミーは、自分の尊厳が満たされたのか、ニヤりとして、抑え切れなかったのか「キー」と声を漏らし、真顔に戻ったかと思えば、わざとらしい、しかめっ面になり、自分は完璧にやってるんだけど、夜勤がダメなんだと言わんばかりに、かしこまったキビキビした動作で作業を続けた。


 グリミーの狡猾で丁寧な段取りは、今日も上積みが出来た。


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