第2話 グリミー1号 2号の誕生の物語
グリミーは、今日も陰口で巧妙に感化させる作業に怠りがなかった。職人気質で作業についてはこだわりがある。
グリミーこと東藤国明(60)。グリミー(grimmy)は渾名だ。当て字で作ったこの渾名を我々は気に入っている。グリミーは定年になり嘱託社員として働いている。前の職場で問題になり異動でここに来た。所長から言わせれば“押しつけられた。”が正解だ。
「なんで、ここに置くんだ。夜間なんか暇なんだから考えろよ。な~。」
と、周りに言っていた。誰に言っているというわけでもなく、ただ、自分の立場を見せつけたいがために、ポケットに手を入れながら、
「配達ドライバーのことを考えろよ。俺が夜勤の時はここまでやってるよ。」
と、自分はやっていないのに、わざとらしいしかめっ面で、まことしやかに言っている。
周りで積込を始めてるドライバーの視線も夜間作業員を刺すようになっていった。
グリミーの感化作業には抜かりがない。今日も上手く上積みをした。こうやって、毎日コツコツと積み上げて行くのだ。
そして、グリミー 1号が誕生した。
「こんなんじゃダメだから俺がやる。」
と、夜間作業員が仕事をしていないかのように上塗りをしたのは、感化された配達ドライバーの
続いてグリミー 2号が誕生。
ガーン!!と大きな音が構内に響いた。
荷物を古くて錆びがある台車に叩きつけたのだ。この男は、
「チッ!また、間違えてるよ。」と、周りにも、困った奴らだと広めたいかのように、台車に叩きつける轟音と共に「ウキー」と響いた。
グリミーは一瞬ニヤけたが真顔に戻すと、自分は完璧に作業をこなしてるけど、夜勤が適当なんだと言わんばかりに、わざとらしい顔つきと、かしこまったキビキビした動作で仕分け作業に入った。
夜勤の二人は、なんかとてつもなく悪いことをした挙げ句に、仕事をしていないかのような視線と雰囲気に包まれながら仕分け作業を続けた。
グリミー 2号は狡猾だ。誤仕分けについては何も言い返せないと誤仕分けを盾にしているのだ。
グリミーの感染力はこれ程に強い。そして、周りの人(他の作業員)は、自分に矛先が向かないようにグリミーを中心に仕事をするようになっていった。
グリミー予備軍、潜伏期間はそう長くない。
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