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 人生の半分が夢でできてるのがぼくだって話してあげたら、キミはとてもうらやましがったよね。一日の大半がベッドの上、宿題なんてない。夢を見ることが生きる意味そのもので、見た夢が知らない人を救い、知らない人を殺してきたのがぼくだ。

 大抵の夢ははっきりしていて、生々しい他人事の光景に傍観者を決めこんできた。だって当事者になることなんて無理な場所に、小さなころからずっと閉じこめられているから。

 だからぼくは安全に他人事のように、ぼくを崇め奉る彼らが望むままに、この世界を斯く在れかしと変え続けてきた。

 景色もはっきりしない、曖昧な夢に登場するのはキミだけ。キミは顔も名前もぼやけているけれど、子どもなのにおじいちゃんみたいな真っ白い髪の毛をしていて、でもすごくいいやつで、ぼくにたくさんのいろいろを教えてくれて、ぼくをたくさんのいろいろな場所へと連れ出してくれた。ぼくをたくさんのいろいろな悪い奴から守ってくれたヒーローだった。

 キミとの夢だけがこんなに曖昧なのは、小さいころに読んだ絵本のせいだと気づいた。

 きっとキミはぼくの妄想に違いない。九つにもなればわかる。空想の英雄に憧れるのと、空想を現実だと思いこむのは違うってわかる。

 ぼくは自分が恥ずかしくなった。これは罪だと自覚した。

 罪をいっぱい犯してきた。気まぐれに吐いた言葉が、たくさんのいろいろな他人を傷つけてきた。たくさんのいろいろな罪なき人々を犠牲にしてきた。殺して、死なせて、失わせてきた。

 でもひとは罪とは切り離せないんだって教えてくれたのはキミだ。

 なら、ぼくから犯した罪を切り離すこともできないのだろうか。

 ぼくにあらかじめ定められた最期は、溜めこんで、ため込んで、お腹の中で今にも破裂しそうになったぼくの罪をあがなうためのもの――そう嘆いたぼくに、キミはこう言ってくれた。

 ぼくがゆるしてやる。きみを悪くいうやつがいても、ぼくがきみのいちばん近くでゆるせば、きみのお腹だってもっと軽くなるぞ。

 犯した罪がお腹にたまるなんて喩えたのを鵜呑みにして、ほんとうにおかしなキミ。

 だからいつもベッドの上でしてるみたいに、キミを枕代わりに抱きしめてやった。

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