4章 砂漠からの救助
4-0 ギルド長、救助隊について語る
ここは冒険者ギルドの大会議室。席に着く面々は、全員が歴戦の冒険者たちだ。
「本日の会議は終了だ。……ところで、一つ世間話がある」
上座に座るのは、ギルド長ギルバードだ。かつて最強の冒険者として賞賛された彼は、すでに最前線を退いている。にもかかわらず、そのたくましい肉体は衰えることを知らないかのようだ。
「何ですかな、ギルド長」
「最近、気になるうわさを耳にしてな。確か……救助隊、といったか」
議員達の緊張が解ける。時折、ギルド長は雑談のふりをしてとんでもない重要事項を吹っ掛けることがあるのだ。だが、今回はそうではないらしい。救助隊の噂は、この場にいる誰もが一度は聞いたことがある。彼らは少し目立つだけの、どこにでもいる冒険者だ。
「そのリーダーの……ヒーラーだったか、ヒールーだったか……とにかく、腕の立つ聖職者がいるらしい」
「存じておりますぞ。仲介料も支払わない、我々にとっては毒にも薬にもならない連中ですな」
「おう、補佐殿はよくご存じだ。そういえば、俺の不在時に仲介料システムを議決しやがったのは、お前だったよな、補佐」
「おかげでギルドの財政を立て直すことができたではありませんか。ほほ」
和やかに話す二人、凍り付く空気。当然、外野が口を挟めるような雰囲気ではない。
「それと、うわさをもう一つ耳にした。なんでも、第4勇者パーティーの聖職者が戦死したそうじゃねぇか」
「存じておりますぞ。代わりに優秀な大聖女をメンバーに迎えたとも」
「おう、補佐殿はよくご存じだ。そういえば、第4勇者の今後の活躍をダシに商会との取引を強引に進めやがったのは、お前だったよな、補佐」
「おかげでギルドの財政を立て直すことができたではありませんか。ほほ」
ギルド長が席を立ち、補佐がそのあとに続く。彼らの足音が消えるまで、その場の誰も、恐怖で動くことができなかった。
「第4勇者パーティーの聖職者と、救助隊リーダーの聖職者。いやあ、うちには優秀な冒険者が多いな。冒険者ギルドの未来も安泰ってもんだ」
「まったく、そのとおりですな」
以降数日、ギルド長補佐は本部を留守にする。そのことをギルド長が表立ってとがめることはなかった。
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