第29話 規格外

 それから2日が過ぎた頃。空に大きな穴が発生した。観測できたその総数は8。その8つの穴から魔人とおぼしき人型生命体と竜種モンスターを確認。


「こっちに侵入してきたっちゅー訳や。菅原君ン」

「そうですね」

「ひさびさの格上相手の喧嘩や。楽しんで行こなア~!」


 すぐ真後ろに魔人が降り立った。


「第六段階──【デモゴルゴン】」


 魔人がつぶやく。みんなピリついた顔をしていた。当たり前だ。みんな第六段階とはいえ、相手より強いと言うことはありえない。魔人は第六段階に至っていた。戦力を揃えて来ている可能性もある。


「よし! ほなこうしよ! 『風見組VS王者の刃! チキチキ! 地球防衛レース』の開催や!」

「あ!? お前なに言ってんだ」


 篠原が楽しそうに言っていた。

 ──魔人の首を引きちぎりながら。


「ええかア。風見組。僕は魔人と戦いたい。格上やからなぁ。みーんなそうや。でもなあ、俺はなあ、風見組と喧嘩もしたいんや~。ええか? 喧嘩はセックスや! オナニーとちゃうで~。独り善がりのセックスは相手がつまらんやろ。だからテクニカルに殺し合う。ウン! おもろいな! でもでも、僕思うんよ。セックスってふたりでやるより大人数でやった方が楽しいなーって」

「一理あるが……お願いします、いまは真面目にやって」


 旭が言う。……一理ある?


「なんや菅原君。僕らに負けるのが怖いんか?」

「俺は大人やから乗りませんよ。安い挑発には」

「つまらんなあ、せやったら追加ルール。勝った方がお嬢さんの初えっちもーらう」


 お嬢さん……? お嬢さん……あっ、俺か。


「死なすぞ……!?」

「菅原君が勝てばええ話やん。怒らんといて」


 そうしていると、威圧を感じる。

 そこには魔人がいた。


「敵の前で楽しそうに雑談か? 劣等種」

「「敵?」」


 旭と篠原が反応を示した。


「「どこ?」」


 心底バカにしたような顔で。

 魔人の顔に怒りが満ちると同時に、ふたりは天を指差して唱える。


「「第六段階──」」


「【天之御中主神】」

「【天手力男神あめのたぢからお】」


 魔人が叫ぶ。


「ここだ──」


 気がつけば、魔人は顔面が潰れ、上半身と下半身が引き裂かれていた。


「「だからどこだよ」」


 頭を魔人の集団に投げつけて、叫ぶ。


「面倒だー。何万人でもいいぞー。かかってこーい」

「バカめっ! こっちには8000体の竜種がいるんだ!勇者ですらてこずったモンスターだぞ、お前ごとき劣等人種に」


 突風、と同時に、空に停まっていた竜種の半数が地に落ちた。


「竜種4000体殺すのに0.1秒。…………勇者ですらてこずった、ね……ハハア、なるほど。お前らの世界ってアリンコしかいないんだ。俺ちょっとブルっちまったよ」


 黒い鎧が揺らめいて、緑の光が煌めいた。


「何のインチキを使ったッ!?」

「アリンコに負けた飴玉が……意気がってうちの縄張しま荒らしにきた責任は……誰に取らせれば良い?」

「なにっ」

「良いよ。口なんぞ開かなくて。どうせ口開けど他責思考。俺、他責思考嫌いなんだな。才能の欠片もない猿共が。……しょうがないんだもの。ただあんまり意気がるな」


 篠原は楽しそうにかえしのついた黒い剣を竜種モンスターに突き刺して、笑った。


「お前さんらが相手取ってるのは日本、いやっ、地球上唯一の最強やで~! こないなモンスターなら5億体でも用意せな相手にならんで!」

「なんで、人間にこんな芸当が出来るんだ……!」

「人間? 違うね……」

「はっ!?」

「俺は醜いおばけだ」


 約10秒間の突風。魔人50万人、死亡。



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