第30話 女子高生、自分の特殊体質を知る。
「ねぇ、おじさん!」
「……………………」
「おじさん??」
「……………………」
「おじさんってば!!」
「……………………」
ダメだ。横になったおじさんは、目をつむって完全に知らんぷりモードだ。
しかたなく、アタシは空を見上げる。いわし雲……だったかな? 空一面に薄くて細かい雲が広がっていて、雲の隙間から光が差し込んでくる。
それにしても、なんでダンジョンなのに空なんてあるんだろ。おかげさまで探索するのに照明とか持ってこなくていいけどさ。つくづくダンジョンって不思議だ。
空をながめてほけーっとすること3分。
ガチャリ
空間にいきなり非常階段のドアが現れると、ふたり乗りのべピーカーと抱っこ紐でおぶられた三つ子ちゃんを連れたササメさんが現れる。
「ごめんなさい。すいぶんと待たせちゃったわね」
「パパ、パパ!」
「リッカたん、リッカたん!!」
「ぷぴぃぃぃぃぃ。ぷぴぃぃぃぃぃ」
ふたり乗りのベビーカーの中で、
ササメさんは、
「なんですか? それ??」
「マナカウンターよ。空気中や人体のマナ濃度の測定ができるの。
「はい!!」
ウィーーーーン……ガ……ガガ……ガガガガガァァァァァ!!
ササメさんは、マナカウンターをアタシの顔付近に近づけたり、身体の周りをぐるり360°舐め回すように測定していく。その表情は真剣そのものだ。
「あなた、
「そうだな、かれこれ30分以上経つはずだ?」
「だとすると……おかしいわね。そんなに時間が経っていたら、とっくにマナが抜けていてもいいのに、
ササメさんは、マナカウンターをおじさんに向ける。
「な!? なんだ? この濃度は??」
「でしょ。この価だと、シェールストーンに貯蔵されていた黄色いマナを、
「なるほど。ちょっと調べてみるか。
おじさんの無茶振りに、アタシは冷静にツッコミを入れる。
「無理だよ! さっきも言ったじゃん。このクロスボウは弦がめちゃ硬なんだから。アタシひとりなんかじゃ無理だよ!」
「ブウ! ブイブイ!!」
アタシのツッコミに、目が覚めた
「ああ、そうだったな。弦は俺が引く。
おじさんは、
「うひゃ。うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
肩車されたのが嬉しいのだろう。
おじさんは、めちゃ硬のクロスボウの弦をたやすく引くと、クロスボウの上に赤いシェールストーンをセットしてアタシに返してくれる。
「そのままクロスボウを撃ってみてくれ。本来であれば、矢が火の玉になって飛んでいくはずだ」
「うひゃ! うひうひゃ! うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「わかった!」
アタシはクロスボウを構えると、30メートルほど先にある赤い岩山に狙いをつける。
「いっくよー! フレイムアロー!」
ガシャン!
アタシは決め台詞とともにクロスボウのトリガーを引く。矢は赤いシェールストーンを砕くと、そのまま特に変化なくすっ飛んでいって、赤い岩山に突き刺さった。
「やっぱり!!」
ウィーーーーン……ガ……ガガ……ガガガガガァァァァァ!!
ササメさんが、少し興奮した面持ちで、マナカウンターをアタシに近づける。
「思ったとおりだわ!! 赤いシェールストーンがのマナが、
「あ、ああ……」
「うひゃ! うひうひゃ! うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
おじさんは、ササメさんに言われるまま、今度は青色のシェールストーンをセットしてアタシに手渡す。
「いっくよー! フローズンアロー!」
アタシは決め台詞とともにクロスボウのトリガーを引く。けれども、矢は青いシェールストーンを砕くと、そのまま特に変化なくすっ飛んでいって、赤い岩山に突き刺さった。
「いっくよー! サンダーアロー!」
「いっくよー! アイアンアロー!」
緑と白のシェールストーンも撃ったけど、結果は同じ、矢はシェールストーンを砕くと、何も変化を見せないまま、赤い岩山に突き刺さった。
「うんうんうん! 思ったとおりだわ!!
「ほぎゃ? ほぎゃほぎゃ!!」
「ぽぎゃ? ぷぎゃぷぎゃ!!」
「ふぎゃ? ふぎゃふぎゃ!!」
興奮をするササメさんを見て、三つ子ちゃんたちも興奮する。
「? そんなにスゴイことなのか?」
「スゴイなんてものじゃないわよ! レア中のレア! 世紀の大発見だわ!!」
「本当か!?
ササメさんは、おじさんの質問にも大興奮で返答をする。おじさんも大興奮だ。
マナを体内に吸収するってことは、要するにシェールストーンを使えないってことだよね。そんなんじゃ、ダンジョン配信でバスれないじゃない!!
興奮するふたりとは反比例するように、アタシのテンションはだだ下がりになっていた。
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